【西日本一般缶工業協同組合創立 50周年】〈清水雄一郎理事長(大阪製罐社長)に聞く〉意匠性・形状・品質に磨き優位性や価値PRで需要開拓

 西日本一般缶工業協同組合(会員23社)は今月、創立50周年を迎えた。1968年5月に近畿ブリキ製品工業協同組合として発足、1983年に西日本一般缶工業協同組合に組合名を変更し、理事会・部会活動や技術交流といった一般缶業界の維持・発展に向けた取り組みを積極的に行っている。同組合の展望や課題などについて、昨年5月に9代目理事長に就任した清水雄一郎大阪製罐社長に話を聞いた。(綾部 翔悟)

――創生から半世紀が経つ。率直な感想を。

 「歴代の理事長並びに会員・賛助会員の皆様の協力のもと、50年続いたことに感謝したい。一般缶を取り巻く足元の環境は悪くないが、決して良くもない。当組合の維持・向上および一般缶業界の発展のために、既存概念を大切にしながら、一般缶の価値・魅力・認知度の向上に向けた新たな試みを積極的に行っていきたい」

――17年の一般缶の出荷量は5万8275トンと前年比1・4%増。足元の需要環境は。

 「ここ10年は、リーマンショックや東日本大震災など日本社会全体が沈むような時期が続いていた。しかし、数年前から米国や中国など世界経済は回復を見せ、日本経済も少しずつ上向いている。また、直近のデータから見ても一般缶の景況感は底を脱したと考えてよい。下げ止まった今こそ、一般缶の真価が問われる」

――一般缶業界が抱える直近の課題は。

 「母材価格の高騰や各種エネルギーコストおよび輸送費などの値上がりを受け、自助努力では吸収できない部分は転嫁する一般缶メーカーも多い。今後、さらに母材価格が値上がりすると価格転嫁がより一層重要な課題となるだろう」

事業継続や技術交流の活動推進

 「一般缶は幅広い分野で使用されるため、既存需要の掘り下げと新規需要の開拓が重要となる。業界の維持発展や需要増を狙うためにも、缶の魅力や価値を伝えることが大事だ」

――需要開拓の進め方は具体的にどのように行うのか。

 「意匠性や形状および品質などユーザーの要求水準は年々高くなり、また、細分化されている。要望に迅速かつ的確に対応する技術力と、それに伴う設備の導入を進めることが重要だ。ユーザーの役に立つような技術・ノウハウを駆使し、〝今〟の時代に合った製造を行うことで新規・既存問わず需要増に結び付く」

認知度向上へSNSなど活用

 「既存ユーザーに対しては魅力ある質の高い一般缶の製造を展開して、リピート率を高めることで需要を掘り下げていく。新規ユーザーへは、認知度を高める営業展開と意匠など一般缶の優位性や価値を伝えることが需要開拓の一歩となる。近年、外観などの観点から、紙容器から金属容器への切り替えを行う菓子メーカーもある。代替品として一般缶を広めていくことも業界全体の活性化につながると考えている」

――一般缶の魅力や価値とは。

 「一般缶は消費者に寄り添う容器で趣向品として捉えることもできる。中身がなくなったら終わりではなく、大切に扱えばいつまでも手元に残る容器だ。容器目当てに購入するユーザーも一定数いる。意匠性・形状・品質をより一層磨きあげ、人の心を動かす容器を製造することで、魅力や価値は向上する。一般缶のファンを増やすことも組合・業界を含めた課題のひとつだ」

 「また、認知度向上やファンを増やすために、魅力的な缶をFacebookやTwitterといったSNSで発信することが大事だ。組合員各社はそれぞれ個性ある魅力的な生産技術や製品を持っている。それらをユーザーや一般消費者にSNSやメディアを通して知っていただくことが業界の維持発展につながる」

――製造業全体で人手不足が問題となっている。

 「一般缶の業界でも人手不足に悩まされる企業が多い。求人方法も多様化しており、求人媒体の活用の幅を広げることが解決策のひとつだ。今まではハローワーク求人のみで募集をかけていたが、大手求人サイトやフリーペーパーなどを活用することで人手不足を解消した一般缶メーカーもある。また、人手不足を補う自動化や生産性向上に向けた設備投資も今後は必要になるだろう」

――組合の活動について。

 「当組合では毎年数回、技術交流会を実施している。内容は、切断加工機の技術的課題解決法や製造現場の見学など。今後も、事業継続や生産性・技術力向上といった組合での交流を有意義にできるイベントを行いたい」

――きょう24日、創立50周年記念式典を開催する。

 「組合員や賛助会員など約90人が参集する。多くの方々に支えられ、当組合は成り立っている。組合でできることは限られているが、事業を継続・発展するための知識や経験を共有しながら、在籍する組合員と賛助会員が5年後、10年後も〝魅力ある元気な会社〟でいれるよう尽力していきたい」

一般缶業界、出荷量は回復傾向

 一般缶業界を取り巻く環境は、製造コストの上昇や人手不足などの問題がある一方で、足元の出荷量は増加しており、需要は回復傾向にある。

 出荷促進に大きく結び付く新たな要因が少ない一般缶業界は、用途別で需要がまだら模様だ。また、母材価格の高騰および副資材価格の上昇、人手不足や後継者問題なども一部の製缶メーカーでは深刻化している。しかし、経済産業省が公表している生産動態統計によると、一般缶の需要規模を示す出荷量は回復傾向にある。17年度の生産量は前年比で微増となり、先月末に公表した同統計からも、3月の出荷量は前年同月比で増加し、昨年10月から6カ月連続のプラスとなった。

 一般缶は、リサイクル面や、意匠性・形状・品質などの観点から他容器と比較しても優位性があり、代替品としてのニーズもある。また、近年では、デザインなどの魅力的な外観から、一般缶の購入を検討するユーザーも増えている。一般缶業界は、価格面など厳しい環境下ではあるが、製缶メーカーは「需要減は下げ止まった。回復を実感できるほどではないが、復調の兆しが出てきそうだ」と話す。

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