強制不妊手術の氏名黒塗りせず 9人開示、県立公文書館

 県は25日、旧優生保護法下で強制不妊手術を受けた男女9人の個人情報が分かる形で文書を閲覧させるミスがあったと発表した。県立公文書館で保管されている文書で、2016年12月以降、氏名を黒塗りせずに少なくとも10件の閲覧に応じていた。閲覧者からの指摘で今月24日に発覚。県は16年12月以前にも同様の形で公開していた可能性があるとして調査する。

 ミスがあったのは1960~61年度の「実績報告書」。60年度は4人、61年度は5人について、氏名や性別、年齢、疾患名、手術を受けた病院名などが記載されていた。9人は男性2人、女性7人で、最年少は当時19歳の男性1人と女性2人、最年長は同40歳の女性だった。

 同館によると、初めて閲覧請求があった文書のみ、担当職員がチェックし、個人が特定される箇所などを黒塗りした上で開示している。同館は「いずれも1枚の紙に記載され、その1枚を見落とした。氏名のみ黒塗りすればよかった。初回の閲覧がいつか分からないが、その時の判断が誤っていた」と釈明した。

 閲覧請求があったのは判明しているだけで2016年12月以降の12件。うち2件は閲覧制限がない県がん・疾病対策課の職員だった。また、1件はコピーを持ち帰った可能性があるという。

 同館は閲覧請求書が残る2013年4月までさかのぼり調査するとしているものの、9人への謝罪については「直接おわびしなければならないが、住所の記載がないなど情報がなく、捜すことで二次被害につながるのではないかという心配がある」とし、慎重な姿勢を示している。

 黒岩祐治知事は25日の定例会見で「配慮が必要な病歴に関する情報が個人と結び付いた形で公表されていたことが申し訳なく、おわびする。詳細については判明次第発表する」と述べた。

ミスがあった閲覧文書

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