米朝会談中止

 世界が注目していたトップ同士の顔合わせが、こんなにあっさりと中止されるのか。深夜のニュースにあぜんとした人も多いだろう。来月シンガポールで予定されていた米朝首脳会談▲取りやめを通告したのはトランプ米大統領の側。事前協議すっぽかしなどの北朝鮮の態度に不快感を示し、敵対的な行動を取っていると非難した▲その北朝鮮は、直前に核実験場を廃棄する現場を外国メディアに公開したばかりだった。ただ専門家は招かれておらず、実効性の検証ができないと米側は指摘している▲せっかくの対話ムードが吹き飛んでしまうのは心配だが、この衝撃は全くの想定外ではなかった。気まぐれな発言を繰り出す印象の強いトランプ氏と、絶対的独裁者の金正恩(キムジョンウン)委員長。恒久的非核化の道筋を託すには、どちらも危なっかしいキャラクターと見えていた▲言うまでもなく米国は核大国。北朝鮮も核兵器の開発を終えたとされる。核のボタンに近い2人が同じテーブルに着かないままでは、北東アジアの平和は絵に描いた餅の状態が続く▲トランプ氏の通告の背景には何らかの政治的思惑がうごめいているのだろうが、両国の声明を注意深く読むと、対話の余地は残っていると感じる。今後その決断が再びひっくり返り、世界を驚かせる可能性はないのだろうか。(泉)

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