米朝首脳会談中止 「残念」被爆者ら落胆 非核化へ対話再開望む声も

 トランプ米大統領による米朝首脳会談の中止決定を受け、長崎県内の被爆者や識者は25日、「残念だ」「トランプ外交への不信感がまた強まった」と落胆しながらも、引き続き朝鮮半島の非核化へ向け会談の実現を期待した。
 「せっかく実現しそうだったので本当に残念」。「長崎の証言の会」会員の被爆者、城臺(じょうだい)美彌子さん(78)は肩を落とした。ただ前段となる4月の南北首脳会談で朝鮮半島の非核化が目標に掲げられたこともあり「『北東アジアの非核化』という夢をかなえるチャンス。米朝会談も絶対実現してほしい」と願った。
 田上富久長崎市長も「ようやく芽生えた非核化への兆しが消えるのを懸念するが、両国は対話の扉は閉ざしていないとも発表した」とし、今後に期待をつないだ。
 鈴木達治郎・長崎大核兵器廃絶研究センター長は、突然の中止で「イラン核合意からの離脱などに続いてトランプ外交への不信がまた一つ増え、米国にはマイナスだ」と指摘。ただ米側が北朝鮮に中止を伝えた書簡の内容については「全体的に友好的。北朝鮮の対応次第で会談が再度セットされるのでは」と推測する。
 長崎原爆遺族会の本田魂(たましい)会長(74)は米朝の駆け引きが続いているとして「会談はしてほしいが、本当に実現するか疑念もあった」と振り返り、実現には日中韓の積極関与も必要ではないかとの見方を示した。
 米軍の動向を調査しているリムピース佐世保の篠崎正人編集委員は、最近、米海軍佐世保基地で北朝鮮有事に備えた艦船の出入りを確認したとして「北朝鮮の挑発を想定した態勢はすでに整っている」と分析している。

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