会見で分かった、イニエスタが尊敬される理由

24日に来日し、ヴィッセル神戸へ加入することが発表されたアンドレス・イニエスタ。

彼は、同日開かれた記者会見の中で、「自分のチームを助けるために、自分のサッカーを見せるために日本へ来ました。それによって、このクラブと日本サッカーをより一層発展させたいと思っています」と抱負を語った。

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イニエスタの意外な事実

そんなイニエスタについては、一般にあまり知られていない事実がある。

彼はバルセロナの生え抜きで、クラブの歴史上もっとも強い時期をメッシらとともに支え、シャビ退団後は主将も務めた“バルサの象徴”のような選手である。

しかし、実は彼はカタルーニャ人ではない。

カスティーリャ=ラ・マンチャ州アルバセーテ県の出身で、12歳の時にバルセロナの下部組織に加入するためにカタルーニャ地方へ移住し、それから22年間、同じクラブで時を過ごしてきた。

ご存じの通りスペインは多民族国家であり、政治的に複雑な事情を抱えている。

特にカタルーニャはフランコ独裁政権による弾圧以来、スペイン政府に強い不信感を抱いており、今なお独立運動が盛んな地域である。

現在のスペインは、かつてのカスティーリャ王国に起源をもつとされる。つまりカタルーニャ人にとって、イニエスタはそんな憎きカスティーリャ(スペイン)からやってきた“余所者”だというわけだ。

しかし今日、われわれがカタルーニャ人として勘違いするほど、彼はクラブが生んだ英雄として讃えられ、愛されている存在となっている。それはなぜだろうか。

もちろん、選手としての優れた能力もあるだろう。しかし、彼の生き方や人生哲学がそれを支えているのかもしれない。

昨日の会見の中でその哲学を垣間見ることができた。

「私も、私の家族も日本の文化に馴染んで、ともに過ごしていきたいと思っています」

「先程も申し上げましたが、日本は素晴らしい国です。その文化は素晴らしい。できるだけ早く日本に慣れて活躍したい。日本の生活を楽しみつつ、プレーも楽しみつつ、役に立ちたいです

「(日本の何が好きですかと問われ)全部です。日本人も好きです。そして一番重要なのは文化に溶け込むこと。国民の一員になりたい。ここは祖国とは違いますが、この文化の一員になりたいです」

イニエスタは何度も日本の文化に言及し、大切なのは慣れる・溶け込みことと繰り返し強調したのである。

その言葉からは12歳にして異なる歴史と伝統を持つ地域に飛び込み、22年間、カタルーニャの象徴たるクラブに全て捧げた彼の強い信念のようなものが感じられた。

現地の文化や習慣を尊重し、彼らの役に立つこと――この姿勢こそが彼を世界最高のプレーヤーと呼ばれるまでに至らしめ、同時にクラブの英雄として称えられるようになった秘密なのではないだろうか。

昨年、カタルーニャで独立の是非を問う住民投票が行われ、スペインとの対立が激化した。

ピケやシャビ、グアルディオラといったカタルーニャ人が独立を願う発言をし物議を醸す一方、イニエスタはこのように呼びかけている。

「これまでさまざまな人の想いが交錯する複雑な問題について公に言及したことはなかったけど、僕たちが直面している今回の問題は例外だ。

確かなのは、責任者はこれ以上被害が出る前に話し合いの場を設ける必要があるということだ。国民全員のためにそうしてほしい。僕たちは平和に暮らさなければならない」

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