目標20年50万筆 歩み順調 ヒバクシャ国際署名 県内活動2年 現在28万筆 「これからが正念場」

 世界に核兵器廃絶を求める「ヒバクシャ国際署名」。東京に呼応して長崎で始まった署名運動は27日、開始から2年を迎える。24日時点で長崎県内の署名数は28万2169筆。2020年秋までの目標数50万筆に向け順調に歩みを進める中、関係者は「これからが正念場」と気を引き締める。核廃絶の国際世論が高まりつつある今、これまでの歩みを振り返り、今後の展望を探る。
 ■平和公園
 今月9日、平和公園。「Abolition of nuclear weapons(核兵器廃絶を)」。原水爆禁止県協議会の大矢正人代表理事(71)は、英語で言い添えて外国人にペンを差し向け続ける。「核廃絶を拒否する理由なんて誰にもない。だから当たれば当たるほど署名は集まる」
 修学旅行生は署名用紙を輪になって囲み、外国人は笑顔でペンを走らせる。観光客が多い平和公園は「署名が集まりやすい場所」。同会メンバー10人が1時間に集めた署名は89筆。毎月9日に行う活動は多いときで150~200筆になるという。現状に手応えを感じる一方「今後どうやって協力者に『当たりきる』かを考えなければ」と言う。
 ■県民の会
 国際署名は16年4月、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が東京で開始。20年までに数億人分を集めることが目標。国連で採択された核兵器禁止条約の発効を求め、全国に運動が広がる。長崎では被爆者5団体の呼び掛けで、オバマ前米大統領が広島を訪問した16年5月27日に平和公園で活動を開始。同9月26日に「県民の会」として賛同団体が結集し、現在は17団体が加盟する。
 活動には知事をはじめ、佐世保市を除く県内20市町の首長が賛同。活動開始から1年の17年5月27日時点で約5万3千筆、県民の会発足から1年の同9月26日時点で約15万筆と着実に成果を上げた。下支えしたのが賛同団体の一つ、生活協同組合ララコープだ。宅配業を手掛ける同社は、商品カタログに添えて署名用紙を各家庭に送付。街頭や県内全9店舗で活動を重ねた結果、17年2~9月の8カ月間で11万を超える署名を集めた。
 ■高い意識
 全国を取りまとめる推進連絡会(東京)によると、26都道府県に複数の団体で構成する県単位組織が発足。長崎の28万超えについて、担当者は「人口比で見ると他都市と比べ署名数は多い。被爆地として県民の意識が高いためではないか」と評価する。
 20年秋に目標数50万を超えるペースで進む中、県民の会の柿田富美枝事務局長(64)は「これからが正念場」と話す。昨年7月に約7万筆を届けた長崎創価学会など「大口」の署名で数を伸ばしたが、今後は主体となる街頭活動がポイント。長崎市内では開催が活発だが、会費がなくカンパで運営する点も踏まえ「少ない資金でも知恵を絞り、県内全域に活動を広げることが大切」と語る。
 核兵器禁止条約の採択、非政府組織(NGO)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞-。国際的な核廃絶の世論を追い風に、県宗教者懇話会や議会、各自治会など呼び掛ける対象を「細分化」しながら協力者を増やす方針だ。定期的に核問題の学習会も開き、世論を浸透させて署名数に結び付ける。県民の会の田中重光共同代表(77)は「機運が高まっている今がチャンス。佐世保市を含め全県的に活動の輪を広げ目標数を突破したい」と意欲を示す。

外国人にヒバクシャ国際署名の協力を呼び掛ける大矢代表理事=2018年5月9日、長崎市松山町の平和公園

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