うそとほんと

 よく見分けのつかないことが世の中にはいろいろある。うそか真実かを見定めるのも難しい。〈うそはほんととよくまざる/うそとほんとは/化合物〉(谷川俊太郎「うそとほんと」)▲本当だと言い張って「うそとほんと」をかきまぜておけば、うそは溶けてなくなるさ。内心でそう踏んでいたとおぼしい。財務省のうそは底なしである▲森友学園との交渉時に理財局長だった人物が「ない」と言い切った交渉記録が先ごろ国会に提出された。決裁文書の「改竄(かいざん)」、それに「隠蔽(いんぺい)」。漢字で書けば難しい所作が、たやすくなされたらしい▲と、そちらについ気を取られるが、このところ「うそとほんと」を巡る問題が日替わりで噴き出してきた。加計問題では、学園理事長が安倍晋三首相と会い、首相が獣医学部の新設について「いいね」と言ったとする文書を愛媛県が出した▲首相は「会っていない」と言うが、うそかほんとか。森友の記録と、自衛隊の日報問題に関する文書を同じ日に出して、悪印象を薄めたつもりか-と野党は難じた。政府は否定したが、うそかほんとか▲詩は続く。〈ほんとの中にうそを探せ/うその中にほんとを探せ〉。かきまぜれば、うそが溶けてなくなるわけではない。それはもう分かっている。ほんとを探し、語る以外に何があるだろう。(徹)

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