被爆者の思い受け継ぎ 横浜、映画制作者が訴え

 広島を訪れる修学旅行生らに被爆体験を語り継いだ沼田鈴子さんの半生をモデルに描いた映画「アオギリにたくして」の上映会が27日、横浜市戸塚区の明治学院大学で開かれた。トークショーも行われ、同作品の企画、製作をした中村里美さん(54)が語り継ぐ大切さを語った。同大学国際平和研究所の主催。

 沼田さんは被爆で左脚を失い絶望に陥りながらも、芽吹いた被爆アオギリを見て生きる希望を取り戻し、平和運動を進めた。同作品は、沼田さんをモデルに被爆者が抱えた苦悩や希望を描き、自主上映の輪が広がっている。

 30年前、米国で被爆映像を上映する運動に参加し、多くの被爆者に話を聞いたという中村さんは、10年前に沼田さんに再会。被爆者が次々に亡くなる中で「生きて伝えねば」という沼田さんの言葉を聞き、映画化を決意したという。

 中村さんは、米国での活動を「怖いものに対抗するため核兵器は必要という考え方が広がっていたが、被爆者のことを知って驚いていた」と振り返り、「被爆者の話が聞ける世代が受け継ぎ、伝えることが必要と思った」と話した。その上で「生き地獄を見た被爆者がたどり着いた一つの答えが、核廃絶だ」と訴えた。

 参加していた近くに住む石原正さん(79)は「私も6歳で被爆したが、直後に広島を離れ、被爆者であると長く人に話せなかった。作品を見て、皆が苦しんできた中であの街で生き続けた被爆者に敬意を表したいと思った」と話した。

被爆者の思いを伝え続けることの大切さを語る中村里美さん =横浜市戸塚区

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