増える移住者

 まだ小さな流れかもしれないが、新たな生活スタイルを求め本県に転居する移住者が増えている。2017年度に県内自治体の窓口を通して移住した人は前年の1・7倍となる782人に達したという▲本県は毎年5千人以上の転出超過を記録する人口流出県。だがこれは転出者から転入者を差し引いた数字だ。データを見ると、転入者はここ数年、2万2千人台をキープしている▲その中の何人が移住者といえるかは分からないが、本県の農村部に移り住む人がちらほら目に付くようになってきた。自給自足農業を志向する人、特産物を生かして起業を目指す人、木工などの技術を身に付けた人…▲農村部は過去数十年、過疎に悩んできた。多くの若者が高収入の仕事や華やかな生活に憧れて都会に流出する。この傾向は今もそれほど変わっていないはずだが▲何かが変わったとしたら、それは都会の側にあるだろう。高い生活コストを掛けてあくせく働いても思うほどの豊かさが得られないなら、収入はほどほどでいいから田舎でマイペースに暮らしたい。そう考える人が少しずつ増えている印象▲出ていく人と入ってくる人。その思いは正反対かもしれない。だがその両方があっていい。人生経験を重ね価値観の変化を自覚して、Uターンを決意する人もいるのだから。(泉)

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