「ペスカドーラ町田」を退団した篠崎隆樹氏にインタビュー~Fリーガー生活&Fリーガーを目指す子どもたちへのメッセージ~

 湘南ベルマーレからペスカドーラ町田に移籍したのち10年間所属し、2017/2018シーズンで退団したFリーガーの篠崎隆樹氏。

 Golaco[ゴラッソ]では、そんな篠崎隆樹氏にインタビュー。この日、篠崎氏がフットサルクリニックを開催していたフットサルコート、フュエル鎌ヶ谷(千葉県鎌ケ谷市軽井沢1981-3)で取材を行い、ペスカドーラ町田時代の生活や思い出を聞いてきました。また、将来Fリーガーになりたい子どもたちに向けたメッセージや、ファンへのメッセージももらってきました。

篠崎隆樹氏プロフィール

写真提供:篠崎隆樹氏

篠崎隆樹

1984年2月22日生まれ

千葉県出身

175cm/69kg

利き足:左

ポジション:アラ(サイド)

小学生時代、まつひだいSCに所属し、中学生時代はまつひだいクラッキス(現FCクラッキス松戸)に所属。その後千葉県立船橋北高校に入学し、サッカー部に加入。

2008年~ ASVペスカドーラ町田

2017/2018シーズンで、10年間所属したペスカドーラ町田を退団

船橋北高校サッカー部~ペスカドーラ町田に加入したきっかけ

―篠崎さんは千葉県が地元で、千葉県立船橋北高校に入学し、サッカー部に所属していたはずですが、元はサッカーをしていた篠崎さんがFリーガーになったきっかけと、ペスカドーラ町田に加入した経緯を教えてください。

「僕は、とあるメディアの方からの後押しをきっかけに湘南ベルマーレに加入することになり、そのままFリーガーになりました」

「湘南ベルマーレで3ヵ月くらいプレーをした後、湘南ベルマーレの選手2名がペスカドーラ町田に移籍が決まって、その時に当時の監督が“左利きの選手が欲しい”と声をかけてくれたことで、ペスカドーラ町田に加入しました」

―ペスカドーラ町田に所属している期間中に特に印象に残っていることや思い出はありますか?

「思い出に残っているのは、一番初めに代々木で決めたゴールです。これは忘れられないというか、とても印象に残っています」

仕事とFリーガーの両立生活は自己管理が重要

写真提供:篠崎隆樹氏

―Fリーグの選手は、フットサルの他に仕事を持ちながら活動している選手が中心といわれていますが、仕事と両立しながら、ペスカドーラ町田では一日あたり何時間練習していたのか。それからペスカドーラ町田での練習以外に、篠崎さんがプライベートで確保していた練習時間も教えてください。

「(ペスカドーラ町田での)1日あたりの練習時間は、だいたい2時間くらいです。僕は仕事をしていて、夜とかはトレーニングできないので、朝、練習前の30分~1時間くらい、ジムで筋トレだったりとか体幹だったりとかをやりながら、(ペスカドーラ町田では)2時間の練習をして・・・という感じでしたね」

―篠崎さんに限らず、Fリーグの選手たちはお仕事をしながら、チーム練習に参加したり、プライベートで練習をしたりしているのですね。

「はい。そうですね。もちろん(フットサルのみで生計を立てている)プロ選手もいますけど、ほとんどのFリーグの選手はそうじゃない状況というか。仕事を持ちながらプレーしています。なかなか自分に費やす時間っていうのは限られている選手が多いと思います」

―生計を立てるための仕事と、Fリーグの選手の両立は大変でしたか?

「(Fリーグのみで生計を立てている)プロ選手と比べて考えると、フットサルに費やせる時間が違います。トレーニングやケアが、きっちりできる選手と、できない選手の間でコンディションの差っていうのは生まれがちだったと感じています」

―プライベートで行っていた練習で、篠崎さんにとって特に好きだったトレーニングや重視していたトレーニングはありますか?

「そうですね。腹筋とか体幹系はけっこうやっていました。でも、あんまりウエイトといいますか、重りを持ってガンガンやるのはあんまり好きではなくて。もちろん筋肥大っていうのは重要だと思うんですけど、しなやかさとか、自分が思う良さは消したくなかったので、それに関してトレーナーと相談して、特別なメニューというか柔軟性が出る筋トレをしていました」

―Fリーグの選手は、どこまで自己管理ができているかどうかもコンディションに影響を与えるとのことですが、篠崎選手は食生活や睡眠時間について、こだわりはありましたか?

「僕は食にストレスは抱えたくなかったというのがあって。もちろんジャンクフードとかは食べ過ぎないように意識はしていましたが、できるだけ好きなものはとるようにしていました」

「例えばサッカーの長友選手は食べるものを絞っているようですが、僕にはそのやり方は苦痛だったので、油物でも食べていました。他の選手はどこまでやっているのかわからないですが、僕はそんな感じでした」

「ただ、肉と野菜はしっかりとるようにしていましたし、睡眠も、夜の12時前には寝るように意識していました。8時間くらい睡眠は欲しくて、仕事で多忙な日とかでそれが難しいときは、せめて6時間くらいは確保するようにしていました」

Fリーグの課題~観客数の増加に向けての考え~

―Fリーグは観客数が少ない面が課題として考えられることもありますが、選手として10年以上活動してきた中で、この状況を改善するためには何が必要だと感じていますか?篠崎さんの率直なご意見をお願いします。

「皆さんお金を払って観戦に来ると思うので、お金を払っても観たい選手がいるかっていうのが重要だと思います。価値っていうのは人それぞれで。何を持ってお金を取れるかっていうのは色々あると思います。例えば、スペクタクルで凄くアイデアがある選手を観たい人もいれば、本当に能力の高い選手を観たい人もいるかと思います」

「今はどちらかというとフィジカルベースが出来ている選手が多いと思いますが、僕は本来、細かい局面でみせる“技”というのがサッカーに比べて、フットサルには圧倒的に必要だと感じています。観てておもしろい選手が出てくるというのが、将来のフットサル界の発展のために必要だと、個人的に感じています」

―他のスポーツでも重視されていますが、フットサルにもスター選手が必要なんですね。

「そうですね。今は森岡薫選手とかピレス・イゴール選手のような人気選手で成り立っている部分もありますが、彼らはもう40歳近くまで迫っていますし、あと2、3年以内に、新しく何かを生み出せる選手が出てくるっていうのは、フットサル界にとって重要なことなのではないかと思います」

―篠崎さんが思う観てておもしろい選手になる可能性や、スター選手になる可能性を秘めている選手は誰ですか?

「ペスカドーラ町田の室田祐希選手はテクニックを持っているので、彼に関しては可能性を秘めていると思います」

―篠崎さんは今後どのような道に進んでいくのか、進路は決まっていますか?

「まだ確定はしていないです。フットサルを継続するのか、それともほかのフットボールの道に行くのか、まだ決まっていない。ビーチサッカーなども含めて考えています」

「フットサルの普及っていうのは重要だと思います。僕は自分のことを、フットサルの良さを知ってもらって、フットサルってものの認知度を上げていく役目を持つ1人だと思っています。僕は10年以上Fリーグでプレーしてきたので、そういう役割になっていくのも1つなのかなと思います。あとは子どもの育成も重要だと思っているから、そこも含めて今後について考えています」

―指導者一筋というわけではなく、選手と指導者、両方を目指す可能性が高いですか?

「選手はできる年齢が限られているので。僕が今40代、50代だったら難しいけど、あと2、3年くらいは頑張ればできるかなっていうのはあるので(選手と)両立しながら(指導する)子どもたちに“コーチみたいになりたい”っていってもらえるような立場にならないといけないのかなって気持ちもあるんですけど、時間をおいてもう少し考えるつもりです」

Fリーガーになりたい子どもたちやファンの方々へ~篠崎氏からのメッセージ~

写真提供:篠崎氏

―今は“サッカー選手になりたい”という子以外に、最初から“Fリーガーになりたい”という目標を持っている子も出てきているようです。将来Fリーガーになりたい子どもたちに向けて、そのためはどうしたら良いか、アドバイスをお願いします。

「今はどこのFリーグのチームも下部組織が育ってきていて(Fリーガーになりたい子は)そこに行きがちだと思うんです。フットサルはフットサルで特徴があるので、フットサルだけやっていれば良いっていう考え方の人もいるとは思いますが、やっぱり何気にサッカースキルも重要で、フットサルとサッカーの両立ができると、より様々なビジョンが見えて、プレーの幅は広がるかなと思います」

―特にサッカーのどのような面がフットサルに活きると考えていますか?

「シンプルに、止めて蹴る技術とか。フットサルってボールが重いので、多少誤魔化せる部分はありますが、でも、やっぱりサッカーの跳ねるボールでしっかりコントロールできるようにすることで、テクニックになっていくというのを僕は感じています」

「最近ではフットサルしかやってきていない若い選手も増えていますが、それだけだと難しい部分もあるかと思うので、(サッカーとの)両立というか。それができれば“フットサル”という括りではなく、“フットボール”という括りで日本が成長するきっかけになると思うので、ぜひ若い子たちにはサッカーにも積極的に取り組んでほしいです」

―最初から”Fリーガーになりたい”と視点を定めている子でも、サッカーが大切なんですね。

「もちろんそうです。文化として、ブラジルとかだとフットサルでもプロリーグがありますし、そういう国だったらフットサルだけでお金を稼ぐっていうこともできますが、日本だとまだその段階まで行っていません。Fリーガーになりたい今の子どもたちが大人になったときにはFリーグの全チームがプロ化している可能性もあるかもしれませんが、それはまだ先の話でビジョン的には見えていないです」

「フットサルのプロリーグがあるブラジルの子どもたちも、元々フットサルだけをやっているわけではなく、サッカーだったりストリートをやったりしてきています。1つの分野に固執して継続するというのは、もちろん大変で難しいことですが、それだけではなく、それに関わるものも吸収するようにしたら、一回りも二回りも、今いるFリーガーよりもアクセントが聞いた選手が出てくるのかなと僕は思います」

―ペスカドーラ町田のサポーターや、篠崎さんのファンの方々へのメッセージをお願いします。

「本当に僕自身は10年間プレーして、ペスカドーラ町田に愛着がありますし、共に戦ってくれたサポーター、スポンサーの皆さんには多大な感謝をしています。ただ、そこに関してリーグ優勝っていう目標を僕がいる中で達成できなかったっていうのは、ふがいなく思いますし、この残されたメンバーの中で頑張ってもらえたらと。陰ながらですが、チームのことは応援していくつもりでいます」

(インタビュー当日、FUEL鎌ケ谷フットサルパークにてクリニックを開催)

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