ロッテ、敏腕広報がメディア露出を増やしたわけ「知らない人たちに興味を」

ロッテ・梶原紀章広報【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

ロッテの球団広報を務めながら、自ら原稿も書く梶原紀章氏

「球団が発信しなければ今後生き残れないと感じます」。昨年1月の記事「千葉ロッテ『広報カメラ』の仕掛け人に聞く」にて千葉ロッテ広報・梶原紀章氏は球団広報の役割についてこう語っていた。そんな梶原氏はどのような思いでファンに情報発信をしているのか…。前編は梶原氏が得意とするコラム執筆について聞いた。

 梶原氏は元スポーツ紙記者という前職を生かし、様々なネットメディアで球団、選手についての記事を執筆している。地元・千葉日報では連載コラム「千葉魂」を持ち、2月の春季キャンプ期間中は毎日コラムを2本執筆した。「2月のキャンプは野球ファンに対して見本市のような時期。新しい魅力、期待感を煽るためにあえて自ら積極的な情報発信を心がけました。少しでも新生・井口マリーンズに希望、ワクワクするような期待を持ってもらい球場に足を運んでもらいたいという戦略の下です」と振り返る。

 以前から梶原氏は球団発行の「マリーンズマガジン」や、西村徳文監督時代には球団携帯サイトに「七転八起」と千葉ロッテファン向けの媒体で情報発信をしていた。それが2014年、千葉日報を皮切りにネットメディアを中心に活躍の場を広げる。そこにはどんな意図があったのだろうか。

「インターネットを幅広い年齢層が見るようになったのが大きいです。情報が広まりますからね。コラムを書く上で常に意識しているのは『Yahoo! トピックス』にアップされること。Yahoo!のトップに出れば相当の人が見るじゃないですか。野球ファンじゃないスポーツファンや、スポーツに興味のない人にも読んでほしいという思いでやっています」

千葉日報ではシーズン中、毎週火曜日に「千葉魂」を掲載

「地元・千葉県民の方々に千葉ロッテの情報を定期的にある状態を作る狙いがあった」という千葉日報の「千葉魂」はシーズン中、毎週火曜日に掲載されている(シーズンオフは隔週掲載)。梶原氏が大事にしているのは「情報の鮮度」だった。

「締め切り間近になって、すぐ頭に浮かんだことを記事にしています。『今週はこの選手を書こう』とあらかじめ決めつけないですね。最初に浮かんだイコール、一番面白かった出来事じゃないですか。『千葉魂』については鮮度が第一です。毎年開幕前に前年の記事が書籍化されていますが、うれしいですよね。ファンにとっても読むことで前のシーズンを思い出し、『今年も応援しよう』となりますから。シーズン中はチームに感情移入してもらい、より観戦を楽しんでもらうために書いています」

 また、昨年は「文春オンライン」が主催する「文春野球コラムペナントレース2017」に千葉ロッテ代表として“参戦”した。各球団のコラムニストがその球団についてのコラムを執筆し、ペナントレースのように優勝を争うというこの企画。梶原氏は球団広報の立場だからこそ書ける、様々なエピソードを伝え見事、パ・リーグ制覇を飾った。

「毎年何か新しいことにチャレンジしたいと思っていたときに、声を掛けてもらいました。文春といえば影響力のある媒体。そこに自分発信で千葉ロッテの情報を出せるというのは広報戦略の面でメリットがありますよね。もちろん、怖さもありましたよ」

「千葉魂」は選手についての記事がメインだったが、「文春野球…」ではチームスタッフや球団のファンサービス・取り組みを主眼に置いた。ただ、シーズン終盤は優勝を狙うため、選手メインのコラムに方向転換。「チームが最下位だったので、『文春野球…』では優勝したいという意地ですね。一方、ポリシーを貫けなかった思いもあります」と語る。

ロッテ・梶原紀章広報と井口資仁監督【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

増えるメディア露出の理由は…「もっと多くの人に届かせないと」

 チーム制となった今年は千葉ロッテ“監督”として参戦。開幕3連戦後には鈴木大地選手がコラムを執筆するというサプライズを演出した。それでも、球団の取り組みについて発信する基本姿勢は変わらない。

「情報の押し売りではなく、受け入れてもらえるように意識しています。例えば、お客さんが千葉ロッテのグッズを手にしたときに『あぁ、球団はこんな努力をして開発していたんだなぁ』と思えるように。選手だけでなく、フロントにも感情移入してもらえるようなものを広報がショップに対してバックアップできたらと考えていますね」

 梶原氏は野球と文章について、このように語っている。

「ただ打った、抑えただけでなく、『こんな苦労・悩みがあった選手が活躍した』とバックグラウンドを伝えることで野球が2倍、3倍楽しくなるはず。どのスポーツよりも野球が一番バックグラウンドが伝わりやすいと感じます。野球には『間』がありますから。そして野球は一番文章にしやすいんですよ。例えば『1点リードの9回、2死満塁…」だけで場面が分かりますよね。そういう意味では野球には状況が分かる面白さがあり、一番文学的なスポーツだと私は思います。だからもっと文学的にできるのではないでしょうか」

 メディアへの露出が増えている梶原氏だが、今後に向けて「もう一つ上に行かないと…」とその先を見据えている。

「プロ野球ファンだけでなく、もっと多くの人に届かせないと。今読んでくれている人たちを満足させるのは大事ですが、千葉ロッテを知らない人たちに興味を持ってほしいですよね」

 多くの人に千葉ロッテを知ってもらおうと発信を続ける梶原氏。後編では広報の仕事についても話が及んだ。

(後編へ続く)

(Full-Count編集部)

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