野呂文学の世界に浸る 菖蒲忌 高校の同級生 初めて参加 諫早

 諫早の風土に根差した小説を描いた芥川賞作家、野呂邦暢(1937~80年)をしのぶ「菖蒲(しょうぶ)忌」が27日、諫早市内で営まれた。初めて出席した県立諫早高時代の同級生をはじめ、ゆかりの市民ら約200人が、諫早の情景を豊かに描いた野呂文学の世界に浸った。
 市芸術文化連盟(山下博之会長)が毎年開き38回目。野呂は長崎市に生まれ、長崎原爆直前の1945年、諫早へ疎開。20代半ばから諫早で執筆活動を始め、自衛隊生活を基にした「草のつるぎ」で74年、芥川賞を受賞したが、80年5月、42歳の若さで逝った。
 黙とうの後、山下会長は「諫早の足元を掘り下げた作品は国際的に評価され、諫早に刺激を与えている」とあいさつ。諫早高と鎮西学院高の生徒が、随筆「小さな町にて」などを朗読した。
 この日に合わせて先行発売された小説集成第9巻「夜の船」(文遊社)も披露。研究者の浅尾節子さんは「日本語をよく学び、言葉を選び抜いた作品。野呂さんはジャンルを超えた日本文学の表現者」と評した。
 諫早高時代の同級生約20人は、27日の同窓会に合わせて出席。中道節也さん(80)=諫早市=は「3年間、漢文のクラスを受講していた数少ない一人だった。その興味が作品に表れている」と話した。

野呂邦暢の随筆「小さな町にて」を朗読する諫早高放送部員=諫早市東小路町、市美術・歴史館
菖蒲忌に初めて出席した諫早高時代の同級生たち(手前)

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