原爆死没者名簿 記入始まる 3500人分 「生きた証し」思い込め 被爆2世の森田さん 祈念式典で新たに奉安

 長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で新たに奉安される原爆死没者名簿の記入作業が28日、長崎市役所で始まった。今年で17年目となる被爆2世で書道講師の森田孝子さん(70)=同市葉山2丁目=が、約3500人分の死没者の氏名や生没年月日、享年を思いを込めて書き記す。
 作業は例年、複数人で実施していたが、今年は2人目の都合が合わず、森田さんが1人で務める。1人での記入は約40年ぶり。
 両親が油屋町の自宅で被爆したという森田さんは「自分が被爆者であることを隠していた人もいるし、表に出ないところで継承活動をした人もいると思う。そんな人々の生きた証しを残すということに少しでも貢献したい」と語った。
 名簿は1968年から市が作成を開始。筆耕者は延べ61人。昨年までに長崎原爆は17万5743人分、広島原爆は53人分の名前を登載している。今回は、昨年8月1日から今年7月31日までの判明分を対象に記入し、昨年亡くなった谷口稜曄(すみてる)さんと土山秀夫さんの名前も含まれる。また今年は新たに、国が定める被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」の死没者34人分(4月末現在)も加わる。
 筆耕は8月1日まで続く予定。

原爆死没者の冥福を祈りながら筆を進める森田さん=長崎市役所

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