差別撤廃、先進施策に学ぶ 世田谷区議招き研修

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市議会は28日、性的少数者(LGBT)当事者で東京都世田谷区の上川あや区議を招き、性的マイノリティーを取り巻く環境や権利を保障する同区の先進的な施策を学ぶ研修会を開いた。全体の3分の2を上回る市議43人が参加した。

 同区では4月に「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」が施行されたばかり。制定に尽力した上川氏は「国籍・民族差別一般を禁じ、性別や性的指向を理由にした差別も併せて禁止した国内初の条例」とポイントを解説。

 LGBT当事者への生活支援を定め、区民や事業者に男女共同参画、多文化共生施策への協力を求めているほか、「男女共同参画条例の多くにある苦情処理制度が民族的マイノリティーにも設けられた。民間の差別事案の相談も受け付け、行政として対応する」と、その先進性を強調した。

 「男の子」に生まれた違和感から語り起こし、区議として同性カップルの公認制度など、権利を平等に保障する施策を行政に求めてきた上川氏。「条例の実態的な運用はこれから。よい実例になるよう、行政を応援していきたい」と結んだ。

 川崎市では、あらゆる差別をなくす条例の提案を福田紀彦市長が明言している。松原成文市議会議長は今後の議論を見据え、「社会が変わらなければ、生きづらさを抱えた人は生きづらいまま。社会を変える仕組みづくりへの理解が議会全体で深まったと思う」と話した。

■「近く進め方提示」差別撤廃条例で市長

 川崎市の福田紀彦市長は28日、マニフェストで掲げる差別撤廃条例の制定について「そう遠くない時期に制定の進め方について発信したい」と述べた。

 条例を巡っては、福田市長からヘイトスピーチ対策の諮問を受けた市人権施策推進協議会が2016年12月、差別撤廃条例の制定を提言。これを受け、福田市長は再選を果たした昨年10月の市長選のマニフェストで人種、障害、性別、LGBTなどを理由にした、あらゆる差別をなくすための条例を提案するとしていた。

 市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は、差別の禁止や刑事規制を盛り込んだ人種差別撤廃条例の早期制定を求め、制定スケジュールを示すよう市に要請している。

性的マイノリティーの権利保障に関する取り組みを語る上川区議 =川崎市役所

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