とぼけて見せる

 丁々発止、実のある議論をしなくてはならない。それは分かっているはずなのに、国会の場で、とぼけた風味をつい醸し出してしまう政治家がたまにいる。その極めつけかもしれない。民主党政権の時に防衛相だった人である▲審議中、横にぴたりと付いた秘書官が模範答弁を耳打ちする。やじが飛んだ。「腹話術をやめろ!」。自衛隊活動の報告書を読んだか?と聞かれたときは「表紙ならば報告を受けた」と言い切った▲実に困りものだったが、とぼけた味わいは記憶に残る。では、わざと「とぼけて見せる」人はどうだろう。はぐらかしの答弁ばかりだ、と加藤勝信厚生労働相に野党の批判が集まっている▲働き方改革を巡る法案の審議は今国会の焦点であり、しかも参考にされた労働時間のデータに異常値が大量に見つかった。委員会は議論白熱-のはずだったが▲例えば異常値を削除した後のデータについて「誤りは全くないのか?」「しっかりチェックして信頼性の高いものになった」「誤りはないのか?」「信頼性の高いものに…」。こんな調子で堂々巡りの質疑が延々と▲質問をかわし、とぼけて見せる技は森友、加計問題でもおなじみだが、まさか政府の中でお手並みを競い合い、加藤氏が「1番は私」と反り返っている-なんてことはないでしょうね。(徹)

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