「平和への誓い」田中氏 被団協代表委員 初の県外在住者 8・9式典

 長崎市は28日、8月9日の「長崎原爆の日」の平和祈念式典で「平和への誓い」を読み上げる代表者に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員で、長崎で被爆した田中熙巳(てるみ)氏(86)=埼玉県新座市=を選定したと発表した。県外在住者を選ぶのは初めて。
 田中氏は取材に「責任は重い。式典は世界が注目している。日本や世界の市民へ、自分たちの安全のために核兵器に頼る考えを捨ててもらえるような内容にしたい」と語った。昨年採択された核兵器禁止条約にも触れる考えという。
 田中氏は13歳の時、爆心地から約3・2キロの中川町の自宅で被爆。伯母ら親族を原爆で失った。県立長崎東高卒。東北大工学部元助教授。1970年代から被爆者運動に携わり、国内外で核廃絶を訴えてきた。日本被団協事務局長を経て昨年6月から代表委員。
 代表者は従来、長崎県内の被爆者5団体に選定を委ねていたが、昨年から公募制を導入するなど間口を拡大。被爆者や平和団体幹部、有識者ら5人でつくる代表者選定審査会(舩山忠弘会長)が28日、市内で選考会を開き、県内外の応募者12人から絞った候補者6人が被爆体験や思いを語った映像を基に協議し、田中氏を満場一致で推薦した。
 田中氏について舩山会長は「核兵器は絶対悪という強い信念を持ち、国内外で活躍している」とし、田上富久市長も「発信力のある田中さんが言葉を述べる意味は大きい」と語った。

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