難病女性が癒やしのサロン 横須賀、「人の痛みに寄り添う」

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 国指定の難病「メビウス症候群」の根岸あいさん(38)が今春、横須賀市津久井の自宅に、アロマオイルを使った女性専用のリラクセーションサロンを開店させた。先天性の顔面神経まひでほほ笑むことができない根岸さんを、前向きな気持ちにしてくれたのは、いつもアロマの香りだった。難病の自分だからこそ、寄り添うことができる痛みもあるはず。根岸さんは「悩みは違っても、同じように苦しむ女性たちの心と体を癒やしたい」と意気込んでいる。

 根岸さんは生後間もなく、メビウス症候群と診断された。厚生労働省指定の難病で、国内の発生頻度は8万人に1人と推定されている。根岸さんは顔面神経まひに加え、両耳に聴覚障害が起きた。

 両耳に補聴器を着ければ音は聞こえた。でも、まひの治療法はなかった。鏡の前でいくら練習しても、映る自分の顔は「笑顔」ではなかった。器具で口の周りの筋肉を鍛えたこともあった。

 学校に行けば、同級生に「どうして笑えないの」と何度も聞かれた。まばたきもうまくできず、「表情が怖い」とも言われた。就職しても、社内で感じるのは「女性なら、ニコッと笑って愛想を良くしないと」という雰囲気。「どうして、自分は当たり前のことが当たり前にできないのか…」。自分を責め、悩み、劣等感にさいなまれ、体調を崩したこともあった。

 そんなとき、支えてくれたのはアロマだった。匂いに敏感で、昔からアロマオイルを集めたり、部屋でたいたりしていた。優しい香りに包まれると、「この病気で生まれた意味があるはず」と少し前向きな気持ちになれた。

 その意味に、少しだけ気付いた。「難病の自分ならば、人の痛みに寄り添うことができるはず」。民間企業の事務職をしながら勉強し、アロマセラピー検定1級を取得。事務職を辞め、横浜市内のサロンなどで技術を磨き、ことし3月、念願だった自分の店をオープンさせた。

 リラクセーションの世界に飛び込み、意識するようになったことがある。「笑顔がつくれないならば、声やジェスチャーで明るさや楽しさを表現すればいい」。疲れとストレスを引き連れて来店する女性たちを、少しでも元気にしたいとの思いからだ。根岸さんは「良い香りでリラックスしてもらい、少しでも重荷を下ろし、明日への活力につながる場になれば」と力を込めた。

「サロンが心と体を開放する場になれば」と話す根岸さん =横須賀市津久井