ホール天井崩落、川崎市が敗訴 地裁「建築主に過失なし」

 東日本大震災の際、ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区)の天井の一部が落下したのは施工不良が原因として、川崎市が建築主の都市再生機構(UR)と清水建設など施工業者7社に、復旧工事に要した費用など約20億5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、横浜地裁であった。石橋俊一裁判長は「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵(かし)はない」として、請求を棄却した。

 訴訟では、同ホールを本拠地とする東京交響楽団(東響)と所属演奏家も、公演会場の変更を余儀なくされたため不必要な経費負担や逸失利益があったとして、UR側に約1億4千万円の損害賠償を求めていたが、同様に棄却された。

 訴訟で市側は、つり天井を支えるボルトやフック状金具の設置間隔をもっと狭めるべきだったと主張したが、石橋裁判長は「建築当時、そのような技術水準があったとは認められない」と指摘。さらにフック状金具の耐久性についても、想定地震時に受ける慣性力との比較で問題はないとし、「フック状金具を用いたことは瑕疵に当たらない」と述べた。

 判決を受け、福田紀彦市長は「早急に判決内容を詳細に分析し、弁護士とも協議を行った上で、今後の対応について検討したい」とコメント。東響の大野順二楽団長は「とても残念。ホールが使えなかった2年間のわれわれの苦労が裁判所に届かなかった」と話した。

 URは「当機構の主張が認められたものと考えている」とした。

東日本大震災の影響で天井仕上げ材などが落下したミューザ川崎シンフォニーホール(2011年8月)

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