ツール・ド・熊野 第2ステージは山岳決戦

和歌山県と三重県にまたがる熊野地域で開催されているステージレース、ツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2)は6月2日に第2ステージが行われた。この日は三重県熊野市と御浜町を舞台に、熊野の山岳コースをめぐる大会最難関のステージ。3つの山越えで争われたレースは序盤からサバイバル化し、キナンサイクリングチームはサルバドール・グアルディオラの5位がチーム最上位。ステージ優勝と個人総合上位浮上を賭けて攻撃を仕掛けたキナン勢だったが、あと一歩のところで勝利に届かず。残る1日で上位進出にトライすることとなった。

前日、和歌山県新宮市で行われた第1ステージでは、レース途中の落車による影響で、トンネル区間に立てられたフェンスが倒壊。復旧が不可能との判断から、レースは途中でキャンセルに。その後2周回半のパレード走行を行って、地元の人たちや大会主催者に敬意を表した。

総合成績についてはおおむね2日前のプロローグから引き継がれ、キナンサイクリングチームでは中島康晴がトップから4秒差の個人総合25位につける。それ以外の選手も数秒差で続いており、チームが目指す個人総合優勝に向け、好ポジションにつけているといえる。なお、このトラブルにトマ・ルバが巻き込まれたが大きな影響はなく、残るステージも予定通り戦う。

着々と進行している大会は、いよいよ正念場を迎える。第2ステージは、109.3kmの本格山岳ステージ。大会の目玉でもある2級山岳「丸山千枚田」を通過後、一度下って、次に目指すは最大の難所である1級山岳・札立峠。その後の長い下りを経て、再び丸山千枚田へ。毎年2回目の丸山千枚田の上りで総合争いが最重要局面を迎えており、今年も王座を狙う選手たちが激しく動くものと予想された。キナンサイクリングチームとしても、クイーンステージに臨むにあたり、上位進出を果たすべくチーム力をフルに生かし戦うことを前夜のミーティングで確認した。

熊野市の中心部をパレード後アクチュアルスタートが切られたレースは、早くからアタックの応酬。キナン勢は山本元喜がファーストアタックに反応するが、リードを奪うことはできない。その後も数人が前方をうかがっては集団が追いつく流れが繰り返されたが、5km地点を過ぎたあたりで9人の逃げグループが形成される。

この逃げグループに前回覇者のホセヴィセンテ・トリビオ選手(スペイン、マトリックスパワータグ)が入ったこともあり、メイン集団は逃げグループをしばし射程圏内にとどめる。丸山千枚田の登坂1回目を目前に、キナン勢が集団前方を固め、ペーシングを開始した。

丸山千枚田1回目の登坂が始まると、キナン勢がコントロールする集団と逃げグループとのタイム差が縮まっていく。その勢いのまま、集団は総合優勝候補が含まれる追走グループへと変化。しかし、一気に人数が絞られたことや、このグループに選手を送り込んだチームの意図がそれぞれに異なることもあり、協調体制とはならない。後方から加わった選手も含め、追走グループは11人。この中にキナンからはトマ、マルコス、サルバドールが入る。やがて迎えた札立峠の上りではトマがこのグループを牽引し、頂上を前に先頭に合流する。一方で、上りを進むにつれて登坂力の差が明白となり、新たな先頭グループが形成されることとなる。

こうした展開から数的優位な状況を作り出したいキナン勢だったが、トマにチェーントラブルが発生。スピードを上げようとした際にチェーンロックさせてしまい、足止めを余儀なくされる。レースに復帰し前方を目指したが、追いつくことはかなわなかった。

札立峠の上りで1人が飛び出したが、頂上通過後の下りでとらえ、代わって中島がペースアップ。これをきっかけに、中島が他チームの選手たちの消耗を狙ったアタックを繰り返す。キナン勢はトマの脱落こそあったものの、サルバドールとマルコスを主要な選手たちがそろうグループに待機させ、次なる展開へと備える。

波状攻撃を展開した中島は、単独先頭で2回目の丸山千枚田へ。上りに入ると後続の動きも活性化。1人が飛び出すと、そのまま中島をパス。役割を果たした中島に代わり、サルバドールとマルコスが勝負に出たいところだが、他選手の厳しいマークもあり、思うように追走態勢に入ることができない。頂上通過後、下りでもタイム差を縮めることができず、約20秒差のままフィニッシュまで約10kmとなった。

サルバドールとマルコスを含む追走グループから、2名が立て続けにアタックしたが、キナン勢2人は続くことができない。主にマルコスがグループを牽引し、最終局面はサルバドールの勝負強さに賭ける姿勢を見せたが、結果的に先行した3選手までは届かず。

そのままステージ上位争いとなり、上り基調の最終局面を前方でこなしたサルバドールは、このグループで2番手でフィニッシュ。ステージトップからは33秒差の5位。マルコスは少し遅れてフィニッシュラインを通過し、ステージ8位で終えた。

このステージで総合成績が大幅にシャッフル。キナン勢もトップ10に2人送り込み、サルバドールが総合タイム差45秒で5位につける。マルコスは同じく57秒差の8位。そのほか、中島、新城、山本、トマもフィニッシュしており、6人全員で最終ステージへと駒を進めている。また、チーム総合では37秒差の2位としている。

第20回の記念大会として行われているツール・ド・熊野も、残すはあと1ステージ。クジラで有名な太地半島での最後の戦いが待ち受ける。今年から周回後半に、道の駅「たいじ」前の国道42号線を数百メートル通過する新ルートを採用。1周10.5kmを9周回、パレード区間をのぞいて104.3kmで争われる。昨年のこのステージでは逃げ切りが決まったが、スプリント勝負になることも多く、スピードマンが主役となるチャンスのステージでもある。

キナンサイクリングチームは、個人・チームともに総合成績アップをかけた最後の1日となる。どちらも上位陣が僅差とあり、各チームが総攻撃を繰り出すことは間違いない。そうしたなかで、ホームチームとして“地の利”を生かすことができるか。この大会のために尽力してくださった多くの関係者の方々、日頃から応援してくださる方々の思いも乗せて、チームは戦いへと挑む。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツール・ド・熊野第2ステージリザルト

ツール・ド・熊野 第2ステージ結果(104.3km)
1 入部正太朗(シマノレーシング) 2時間45分52秒
2 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) +1秒
3 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +15秒
4 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +33秒
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム)
6 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +35秒
8 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +44秒
17 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +3分51秒
23 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +5分29秒
27 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +7分23秒
49 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +15分28秒

個人総合時間賞
1 入部正太朗(シマノレーシング) 2時間46分35秒
2 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) +7秒
3 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +25秒
4 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +44秒
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +45秒
6 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
8 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +57秒
16 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +4分2秒
23 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +5分59秒
26 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +7分35秒
63 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +15分41秒

ポイント賞
1 入部正太朗(シマノレーシング) 25pts
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) 12pts
10 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 8pts

山岳賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 24pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 12pts
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) 3pts

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 8時間24分51秒
2 キナンサイクリングチーム +37秒

© 株式会社八重洲出版