金属行人(6月4日付)

 某学校法人をめぐる国会答弁、大学スポーツでの危険行為に関する監督・コーチの言動など、さまざまな疑惑や不信が世間を騒がせている。連日メディアが動向を取り上げているが、なかなか本筋の実態が見えてこない▼後ろめたさや隠したいことがあるから、発言がしどろもどろになる。疑惑・不信にうそや虚偽を上塗りすると、さらに疑惑が深まるという悪循環に陥っている。当事者たちの発言は一向に周囲に響いてこない▼双方とも実際に起こった〝事実〟は一つのはず。一方で、うそ偽りのない本質、つまり〝真実〟がまったく解明されていない。一体、いつになったら当事者たちから事の真相を聞くことができるのだろう▼鋼材の値上げ局面が長く続いている。いろいろな要因が絡んで、安定供給のためにも値段を上げていかねばならない構図は分かる。ただ一連のコスト上昇に対する価格転嫁の姿勢は、メーカーや二三次流通、品種によってかなり温度差が生じている▼末端の扱い筋間でも「価格が上がった、上がっていない」の応酬が続く。値上げ転嫁の進ちょく状況や、メーカー値上げに対する積み残し分が実際どれくらいなのか。風評やデマに惑わされずに事の本質、真相を把握するのは当業界でも簡単ではなさそうだ。

© 株式会社鉄鋼新聞社