日本精線、超高強度・ステンレス鋼線開発 医療機器向けなど開拓

 ステンレス鋼線のトップメーカー、日本精線(本社・大阪市中央区、社長・新貝元氏)は、超高強度・ステンレス鋼線「ハーキュリーEH(Extra Hard)」を開発し、需要の見込める線径0・10~0・35ミリの量産体制を確立した。

 現行材の「ハーキュリー」は高強度かつ耐食性を要求される用途にて使用され、市場に広く認知されている。近年、電子部品・車載情報機器・医療機器の大幅な小型化が進んでおり、素材のワイヤーにおいても細径化かつ高強度化のニーズが急増。こうした背景を踏まえ、同社は準安定型オーステナイト系ステンレス鋼に属する「ハーキュリー」に、同社の高度な加工技術を駆使し、加工誘起マルテンサイトの生成量を緻密にコントロールすることで、ピアノ線B種並の引張強さを実現。「コストはピアノ線と比べ、防錆処理などの後処理を含めたトータルコストで競争力がある」(同社)という。

 「ハーキュリーEH」は「ハーキュリー」では強度特性を満たせなかったアイテムやピアノ線B種で耐食性が不足するアイテム、あるいは熱負荷時にばねのへたり(形状変化)が問題となるようなアイテムへの展開を狙う。すでに限定ユーザーによるサンプル評価を実施済みで、「荷重特性やへたり性において優れた結果が得られている」(同)と説明。

 同社は今後、「ハーキュリーEH」の本格的な受注対応を開始し、順次適用範囲を広げる計画。既存材の「ハーキュリー」とは区別して販売する。用途および要求特性に応じて使い分け、国内市場だけでなく海外市場も視野に差別化が図れる需要を積極的に開拓する考えだ。

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