【関西鉄鋼業の展望と課題】〈(2)人手不足・上〉外国人技能実習生を積極採用 加工現場で不可欠な存在に

 人手不足が深刻化している。今年4月の大阪府の有効求人倍率は1・73倍と1倍をはるかに超え、全国平均の1・59倍も上回っている。3K職場で中小企業の多い鉄鋼流通・加工企業は、人材採用に頭を悩ませているところがほとんどだ。そのため外国人技能実習生を積極的に採用している企業が増え、その中でも外国人技能実習生の半分を占めるベトナム人を採用するケースが多い。

 その一つが鋼管流通の宮脇鋼管(大阪市)だ。同社では02年に初めてベトナム人の技能実習生2人を受け入れた。当時を振り返り宮脇健社長は「新工場(西日本パイプセンター)の立ち上げで現場要員が必要だった。景気は良くなかったのだが、人がなかなか集まらなかった。00年ごろに大裕鋼業の井上社長からベトナム人技能実習生の話を聞いていたので、現地まで面接に行き採用することにした」と話す。現在は大阪に17人、埼玉の東日本パイプセンターに7人、千葉県の浦安加工センター2人と合計26人のベトナム人が現場で働く。日本人も含めた現場要員90人のうち3割弱がベトナム人で、同社にとってはなくてはならない戦力になっている。

 外国人の雇用で一番の問題になるのは言葉の壁。技能実習生は半年間ベトナムで日本語学校に通ってから来日するが、十分ではない。同社ではボランティアの日本語教室を斡旋したりしているが「同じ国の人が周りにたくさんいるので、どうしても母国語を使ってしまい日本語の習得がおろそかになってしまっている」(宮脇社長)とする。そこで現場の危険な個所や取り扱いに注意が必要な商品については、日本語にベトナム語も併記。運転手と会話のやり取りが必要な部署には日本人を配置している。

 同社がベトナム人技能実習生を受け入れるにあたり、一番気を付けているのは待遇面。「給与体系は違うが、日本人と同等に接し、社内旅行にも一緒に行っている」(同)とする。こういった日本人と格差のない待遇の良さが、ベトナム現地でも口コミで広がり、優秀な人材の継続的な雇用につながっている。

 昨年11月の法改正により、一定の条件を満たせば現在3年の技能実習生の研修期間が5年に延長できる。同社の従業員規模では年間10人採用でき、最大で50人の外国人技能実習生の雇用が可能だが「日本人とのバランスを見ながら検討していきたい」(同)としている。

 鉄筋加工大手の関西スチールフォーム(大阪市)も工場従業員約60人のうち28人がベトナム人で25人は技能実習生だ。「まじめで一生懸命。300万円貯めて両親のために家を建てる、とがんばってくれています」と田中勲社長は話す。

 実習生は3年で帰国するが、今年は過去に同社で実習した若者3人が、改めて就労ビザを取得し働きに来た。実習で覚えた技能をベトナムでは発揮する機会がなく、技能を生かせ、しかも収入がいい日本で働きたいとして就職した。

 同社が所属する関西鉄筋工業協同組合(理事長・岩田正吾氏)の会員会社では現在、10社で合計44人のベトナム人技能実習生が鉄筋加工・施工に携わっている。組合事業として受け入れを進めている。ベトナムの若者は関西の鉄筋施工に不可欠の存在だ。

 溶接金網最大手のトーアミ(大阪府四条畷市)の北川芳仁社長は「溶接金網業界は慢性的な人手不足で、募集をかけても人が集まらない」と話す。かつてはブラジル人を雇用していたが、今年初めてベトナム人技能実習生を8人(3、5月に4人ずつ)受け入れ、工場の人手不足に対応している。「研修を終えて帰国した後、当社のベトナム合弁会社であるSMCトーアミに入社して品質や工程管理及び安全性を工場で広めてもらえればと考えている」とし、人手不足と海外事業の成長を両軸で進めている。

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