選挙と「国民投票」ではルールが違います!子どもに聞かれる前に知っておきたい7つのこと

自民・公明両党は、駅や商業施設等への共通投票所を設置するなどの改正案を盛り込んだ国民投票法の改正案の審議を今月末にも開始したい考えであることを表明するなど、憲法改正の議論が進む中で、「国民投票」について話題に上る機会が増えてきました。

近い未来に行われるかもしれない憲法改正の是非を問う国民投票は、衆議院議員選挙などの選挙運動とは異なるルールで行われます。ルールの違いは大人だけではなく、子どもたちにも影響があります。主権者教育とのかかわりでぜひ押さえておきたい7つのことをご紹介します。
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模擬投票1:結果を公表できます

主権者教育の代表的な活動である模擬投票(選挙)の取り組み。この記事をお読みの方にも経験したことのある方がいらっしゃるかもしれません。

模擬投票は憲法改正の国民投票でも行うことが出来ます。さらに、国民投票法には「人気投票の禁止規定」がないため、衆議院議員選挙などの公職の選挙を題材にした模擬投票では禁止されている選挙期間中の結果の公表もできます

模擬投票2:選挙公報の代わりは、国民投票公報です

国民投票では、国会に設置される国民投票広報協議会によって「国民投票公報」が作成され、印刷されたものが国民投票の期日前10日までに各世帯に配布されます。

国民投票公報には、(1)憲法改正案及びその要旨、(2)憲法改正案に係る新旧対照表その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明、(3)憲法改正案に対する賛成意見、反対意見が掲載されます。

また、国民投票法の付帯決議では、公式サイトを設置するなどの周知手段の工夫を図ることとされており、インターネットも活用した情報を入手しやすい環境づくりが期待されます。

選挙公報のように、「国民投票公報」は模擬投票をするときの貴重な資料になります。

模擬投票3:模擬投票に動画も使えます

国民投票広報協議会は、憲法改正案及びその要旨その他参考となるべき事項を広報するための動画を作成し、テレビやラジオで放送します。

この動画は、衆議院議員選挙などにおける経歴放送や政見放送のようなものと考えると、その内容をイメージしやすいかもしれませんね。公職選挙法の規定により、経歴放送や政見放送は、録画をして学内で放送することができませんでしたが、国民投票には同様の規制はありません。そのため、国民投票広報協議会が作成する動画を録画したものを、例えば学校内の施設で再生、視聴した後に模擬投票を行うような授業実践を行うこともできます。

動画も使用することで、模擬投票などの主権者教育の取り組みもより多様なものとなりそうですね。

投票運動1:18歳以下も活動できます

憲法改正案への賛成や反対を呼び掛ける「国民投票運動」は、誰でも行うことができます。選挙運動とは違い、年齢制限もありません。
そのため、高校生はもとより中学生、小学生であったとしても、国民投票運動を行うことができます。

国民投票運動をすることは、子どもたちにとっても主権者としての大切な権利の行使となります。国政選挙等の経験に倣って一方的に国民投票運動を禁止するようなことは避けなければなりません。
生徒たちの権利を守ることのできる環境づくりが求められます。

投票運動2:アルバイトもできます

選挙運動では、労務者以外は報酬を得ることが出来ません。
具体的には、ビラ配りや電話かけ等をアルバイトとして行うことが禁止されていることがよく知られています。

一方、国民投票運動では、事情が異なります。
国民投票運動では、「組織的多数人買収及び利害誘導」として、「組織的に多数の者を対象に、投票に影響を与えるような利益を供与したり、利害関係を利用して誘導すること」が罰則の対象とされています。

ビラやチラシといった、街頭演説や勉強会などでも配布されるようなものを配ることは、投票に影響を与える様な利益にはあたらないものと整理されています。そのため、仮にビラ配りや電話かけを行いその対価として報酬を得たとしても、その行為だけでは罰せられることはありません。

また、かつてクラウドソーシングのサイトに、特定の政治思想に基づく有償での記事制作の募集が掲示され話題になりましたが、国民投票運動でも同じような活動が行われる可能性もあります。
生徒たちのアルバイトに関わるルール作りに携わっている人は、インターネット上の活動も視野に入れたルールの整備が求められます。

投票運動3:様々な活動ができます

主権者としての一人ひとりの自由な議論を重視している国民投票運動では、公職の選挙運動では禁止されているような様々な活動も行うことができるようになります。

図表にもあるように、戸別訪問や、自分でビラを作成・配布すること、夜間(20時以降)の街頭演説、電子メールを使った活動などもできます。

投票運動の規制が公職の選挙とは大きく異なることから注目を集めた大阪都構想をめぐる住民投票(2015年)と比べても、憲法改正の国民投票で実施することのできる活動が多いことがポイントです。

投票運動4:いつから活動するのも自由です

国民投票運動には、公職の選挙運動とは違い活動期間の制限がありません。
そのため、選挙運動では禁止されている投票日に運動をすることや、事前運動に相当する活動、例えば国会で議論が行われているうちから憲法改正原案が発議されることを見越して賛成や反対への投票を呼び掛ける活動をすることなどもできます。

子どもたちのためにも主権者教育の見直しを忘れずに

繰り返しになりますが、憲法改正の国民投票のルールは、公職の選挙とは異なります。

国民投票では、投票権こそないものの、子どもたちも自由に意見を表明し、投票を働きかけることができます。この点は、公職の選挙よりも子どもたちの権利が守られていると言えるかもしれません。
でも、もし子どもたちの周りにいる大人が、子どもたちが活動できることを知らずに、国政選挙などの先例に倣うことで、結果として子どもたちの活動を不当に制限してしまったらどうでしょうか。
一方で、子どもたちの活動が、時や場所、手段を選ばずに活発になるあまり、学校がすべての生徒たちにとって安心して学べる場所ではなくなってしまうことはないでしょうか。

そういった事態が生じないようするためには、予め様々な場面を想定して準備を進めておく必要があります。

国民投票の実施が確実に見通せるようになってから、授業の準備や校則、指導方針の見直しをすればよい、と考えていると、現実の変化に対応できなくなる可能性もあります。
本記事が子どもたちの権利を守るためのきっかけの1つとなりましたら幸いです。

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