2.2億円の不適正な契約が発覚した青ヶ島村。日本で「最も人口の少ない村」の選挙にも注目!

東京都の伊豆諸島の青ヶ島村で、村の総務課長を務めていた40代の元職員が契約書を作らないなど不適切な契約を繰り返していたことが発覚しました。

不適切な契約で報道される青ヶ島村ですが、その人口は160人(2018年4月1日時点)と、日本の自治体の中で最も少ない人数となっています。こうした少ない人口から、青ヶ島村の選挙は毎回のように接戦で、争点も特徴的なものになっています。過去の選挙を振り返ってみましょう。

人口160人。日本で最も人口の少ない村、青ヶ島村とは?

東京都に属しているものの、伊豆諸島で最も南にある有人島で、東京都庁から青ヶ島村役場までの直線距離は約360kmと、京都までの距離とだいたい同じほどです。

都心からの移動手段は週4~5便の船または9人乗りのヘリコプターであり、なかなか気軽にはいけない場所にあります。

青ヶ島村の位置 ちなみに青ヶ島村には番地がなく、郵便物は氏名を書けば本人に届くそうです。

江戸時代には噴火の被害により、八丈島に全島民が避難(のちに帰還)する火山島で、現在では火山による地熱を活用した「ふれあいサウナ」や、食塩「ひんぎゃの塩」が名物となっています。

村を二分?激しい選挙戦

そんな青ヶ島村の人口は160人(2018年4月1日時点)。公職選挙法で定められる選挙のうち、最も小規模な選挙となっています。
過去の村長選挙のデータをチェックすると無投票の場合も多いものの、ひとたび選挙戦となると非常に僅差での競り合いとなっているようです。

平成以降の青ヶ島村長選

1989年
佐々木一郎 73歳 現職 62票 落
佐々木 宏 45歳 新人 70票 当←8票差で新人が勝利!

1993年
佐々木 宏 49歳 現職 無投票当選

1997年
佐々木 宏 53歳 現職 無投票当選

2001年
佐々木 宏 57歳 現職 53票  落
菊池 利光 48歳 新人 68票    当←15票差で新人が勝利!

2005年
菊池 利光 52歳 現職 無投票当選

2009年
菊池 利光 56歳 現職 無投票当選

2013年
菊池 利光 60歳 現職 64票 当←26票差で現職が勝利!
山田英三郎 54歳 新人 38票 落

2017年
菊池 利光 64歳 現職 無投票当選

村長選挙の得票数は2ケタ、票差は30票以内と、小規模な村を二分する激しい選挙になっている様子が結果からもお分かりいただけるかと思います。

このうち2001年の読売新聞によると、役場で働く島外出身職員や、2年ごとに異動する小中学校の教員といった地縁・血縁の影響を受けない新住民が有権者の3分の1を占め、彼らの支持固めに両陣営がしのぎをけずった、と記録されています。

大型客船橘丸から望む八丈島 青ヶ島にアクセスするにはこの船で品川から10時間以上かけて八丈島到着したのち、船を乗り換えてさらに約3時間かかる

大型客船橘丸から望む八丈島。青ヶ島にアクセスするにはこの船で品川から10時間以上かけて八丈島に到着したのち、船を乗り換えてさらに約3時間かかる

人口が少ない自治体での選挙の課題

2016年に、61年ぶりに行われた大分県の離島、姫島村の村長選で9回目の当選をはたした藤本昭夫氏は当選後のインタビューで「選挙というのは良くないですね。村民が疑心暗鬼になりますからね」とコメントしたことで物議を醸しました。これに対して「民主主義の根幹をなす選挙を否定するなんて」といったコメントが多く寄せられましたが、島民を分断してわだかまりを産んでしまう危険をはらんだ選挙のあり方には一考が必要なのかもしれません。
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また、青ヶ島の新住民のように、転勤や異動などがあり、その地域に長くとどまる予定のない人々が人口の割合の多くを占めている例に、北海道長万部町があります。同町には東京理科大学基礎工学部の1年生が学ぶ全寮制の長万部キャンパスがあり、約300人が在籍しています。選挙権年齢が18歳に引き下げられてから、有権者数5,000人足らずのこの町の約6%を大学生が占めることになってしまっているのです。町長・町議の1期4年を1年で町を去る大学生が選ぶことについて、様々な議論を呼び起こしています。なお、同キャンパスは時期は未定ですが長万部町から移転することが決まっています。

昨年実施された青ヶ島村長選挙と村議会議員選挙はともに無投票となりましたが、少子高齢化が進み、「消滅可能性都市」が話題になるこれからの社会で、人口の少ない地方自治体における議会のあり方についての議論はますます重要度があがるものと考えられます。不適切な契約で注目される青ヶ島村ですが、「人口の少ない自治体の選挙」という観点からも注目ください。

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