【パイロテック・ジャパンの経営戦略】〈高見敏之社長に聞く〉技術志向、脱ガス装置など注力 グループで世界の最新情報など共有

 アルミ鋳造用設備・副資材メーカーのパイロテック・ジャパン(本社・神戸市中央区)は1999年7月に設立。親会社のパイロテック(ワシントン州スポケーン市)は1956年の設立以来、世界35カ国60以上の事業所で展開し、現在は全従業員数2700人中、300人以上が技術者という技術志向の強いグローバル企業に成長している。同社日本法人社長の高見敏之社長にこれまでの歩みや業容、今後の販売展開などを聞いた。(白木 毅俊)

――まずはこれまでの歩みを。

 「1999年に全世界のフォセコのアルミのキャストハウス部門がパイロテックに販売業務を譲渡するに伴い、フォセコ日本法人のアルミの連続鋳造(キャストハウス)部門が独立しパイロテック・ジャパンの設立となった。私自身も2015年に二代目社長に就任した。パイロテック・ジャパンも従業員数18人中、7人が技術者という技術志向の強い企業と自負している」

――業績はどうでしょうか?

 「今期(18年6月期)は好調を維持している。グループ目標は毎年売上高5%アップだが、パイロテック・ジャパンとしては来期売上高7%アップを目指している」

――注力している製品は?

 「アメリカで開発された『SNIF』や国内で昭和電工が開発した『GBF』といった脱ガス装置とフラックスを主軸に、炉内溶湯処理装置の『PHD』や『HD』、切り粉溶解システム『ロータスシステム』などにも力を入れている。この『ロータスシステム』は従来の渦流方式では困難だった切り粉などの軽量スクラップの酸化を抑制しながら効率よく溶解し、高い歩留まりにより非常に経済的なリサイクルを実現している。複合セラミック製自動注湯ラドル『RFM』は高い断熱性を有しており高強度かつ機械的衝撃に強く、さらに耐磨耗性にも優れている。また、発がん性が懸念されているRCF(リフラクトリーセラミックファイバー)を一切使用しないため、注目を集めている」

――業界内での強みを。

 「世界数カ所で集中的に研究開発を行い、完成度の高い製品づくりを可能としている。また、グループを通じて世界の最新技術やニーズを共有し、迅速に製品づくりに反映できる強みもある。一方で世界と比べ、日本のアルミ鋳造技術は独自の進化を遂げているので、日本には特徴的な製品や副資材が多数存在する。これらをパイロテックグループを通じて世界に発信することもある。一例を挙げると、独自のアンダーヒーター技術を有するアルミ溶解炉メーカーのトウネツ(本社・静岡県富士宮市)と技術提携することで、その技術を世界へ広げているといった例もある」

――今後の製品展開について。

 「フッ素を一切使用しないフラックス『プロマグ』は作業環境意識の高まりから切り替えの動きが強い。カナダのABB社製アルミ溶湯用分析機器4種、水素ガス値を測定する『AISCAN装置』、介在物分析を行う『PoDFA分析』、現場で簡易的に溶湯の清浄度を測定する『Prefil装置』および前モデルより使いやすくなった溶湯中の介在物の大きさと数量をリアルタイムで測定できる『LiMCAIII装置』」の取り扱いを始めた」

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