楽天の未来を担う“5ツール・プレーヤー” 田中和基の勢いが止まらない

楽天・田中和基【写真:荒川祐史】

左右どちらでも本塁打が打てるパンチ力が魅力

 走攻守の三拍子が揃う「5ツール・プレーヤー」になりうる可能性を秘めた逸材が、ついにその本領を発揮しつつある。楽天の田中和基外野手が好調で、「3番・中堅」として抜群の存在感を見せている。担当スカウトだった沖原佳典氏が「強肩、俊足、そしてなによりスイッチヒッターで右でも左でもホームランが打てることが彼の最大の魅力です」と語った高い素質をいよいよ開花させつつある田中は、勢いそのままに主力選手の座へと定着を果たすことができるだろうか。

 西南学院高校、立教大学を経て2016年のドラフト3位で楽天から指名を受けてプロ入りした田中は、俊足と強肩を武器にルーキーイヤーから代走・守備要員として1軍で出場機会を得る。この年のハイライトとなったのは5月20日の千葉ロッテ戦。スタメン出場を果たしてプロ初安打を記録しただけでなく、延長12回に決勝2ランを放ってチームを勝利に導き、1年目から確かなインパクトを残してみせた。

 さらなる活躍が期待された今季は開幕1軍入りを果たしたものの、4打数無安打と結果を残せず4月5日に2軍降格となってしまう。しかし、5月下旬に1軍に再昇格してからは打撃面で長足の進歩がみられ、スタメンとして継続的に出場機会を確保。5月24日からの9試合中8試合でヒットを放ち、守備でも6月1日の試合で大飛球を見事につかんで併殺を完成させるなど存在感を発揮。攻守にわたる活躍によって自らの価値を証明し、中堅手のレギュラー定着に向けて突き進んでいる。

 5日の巨人戦では「1番・中堅」で4打数2安打の活躍を見せ5月26日から8試合連続安打を継続。それだけでなく、5月26日から6月1日にかけては5試合で4本塁打を放って長打力も証明。打順も当初は9番だったが、この大活躍を受けてクリーンアップの一角である3番を任されるように。徐々に周囲からの信頼も高まっていることをうかがわせており、一気にチームの主軸へと駆け上がっていきそうな勢いすら感じさせる。

楽天の課題・機動力不足を解消できる俊足の持ち主

 入団時に沖原スカウトが「チームの中心になれる」と評したとおり、田中がこのまま主力に定着すれば、楽天にとっては積年の課題を解消することにもつながってくるだろう。楽天の盗塁数は昨季がリーグ5位、一昨季と今季がリーグ最下位と、機動力を使えているとは言いがたい状況だ。しかし、田中は昨季に限られた出場機会でチーム最多タイの7盗塁(失敗2)を記録しており、今季はここまでチーム2位タイとなる5つの盗塁を決めて失敗はゼロ。俊足の持ち主であり、成功率も確実に向上している田中がシーズンを通じてスタメンとして出場すれば、チーム盗塁数の大幅な増加も見込めるはずだ。

 俊足、強肩に加えてパンチ力も兼備していることを改めて示した田中は、沖原スカウトが「トリプルスリーを目指せる選手」と絶賛した高いポテンシャルを1軍の舞台で証明しつつある。もちろん、スタメン出場が続くことによって疲労が蓄積し、他球団の研究も進んでいくここからが本人にとっても正念場となってくる可能性は少なからずあるだろう。

 しかし、23歳の若武者がこのままスタメンに定着すれば、走攻守の全てにおいて現在の楽天に足りないものをもたらしてくれると表現しても決して過言にはならないはずだ。これまでチームを支えてきた選手が軒並み苦しむ中で、田中は今後も臆することなく豪快なバッティングを披露し、チームの新時代を担う旗手となることができるだろうか。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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