スポーツ体罰なぜだめか 桐蔭横浜大でシンポ

【時代の正体取材班=田崎 基】大学スポーツで体罰や暴力、ハラスメントが問題になっていることを踏まえ、講演会「暴力根絶シンポジウム」が8日、桐蔭横浜大(横浜市青葉区)で開かれた。サッカーや水泳など同大が強化クラブに位置付ける11部活の所属学生や、スポーツ指導者論の履修者ら200人余を前に、一線の研究者らが登壇。背景として勝利至上主義などを挙げながら「なぜだめなのか、真剣に考えてもらいたい」と語りかけた。

 早稲田大スポーツ科学学術院の友添秀則教授が「スポーツ現場の暴力・ハラスメント根絶に向けて」と題し基調講演。「『信頼関係があれば暴力も許される』と言う指導者がいる。『殴られて強くなった』と言う人もいる。しかし大半の人は嫌になってスポーツから離れていく。その人たちはスポーツを否定するようになる」と指摘した。

 背景については、運動部に所属する学生や指導者への調査結果などを示し、「約3割が暴力を経験している。要因の一つに『勝つためには手段を選ばない』という勝利至上主義がある。さらに進学や就職などに向けて勝利それ自体が手段にもなってしまう。これはもはやスポーツへの冒涜(ぼうとく)だ」と批判した。

 後半は、スポーツを巡る体罰に詳しい望月浩一郎弁護士が「愛のムチがどうしていけないのか、あなたは理由を語れますか?」をテーマに現状を報告。選手やその保護者までもが暴力を肯定するケースがあることを紹介し、「優れたアスリート、優れた指導者になるために考えてもらいたい」と訴えた。

 テレビ朝日でスポーツコメンテーターを務める宮嶋泰子さんは約40年間というスポーツ界での取材経験を踏まえ、「監督やコーチの役割とは、自分の頭で考え行動できる選手の成長を手助けすること。そのプロセスに暴力やハラスメントはあり得るでしょうか」と問いかけた。

運動部に所属する学生らに語りかける友添秀則早稲田大教授 =桐蔭横浜大

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