改正災害救助法が成立 権限移譲で県と政令市が対立

 大規模災害時の被災者支援に関する権限を、都道府県から政令指定都市に移せるようにする改正災害救助法が8日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。権限移譲に絡む都道府県と政令指定都市の主張の対立は、8日の改正法成立に対する受け止めでもにじみ出た。今後の焦点は来年4月の改正法施行に向けた救助実施市の指定基準策定に移っていくが、政府は引き続き理解を求めていく方針だ。

 「政令市は迅速で円滑な被災者救助ができるようになり、都道府県は政令市以外の被災自治体の支援にマンパワーや財源の注力が可能になる」。改正法成立後の会見で、菅義偉官房長官(衆院2区)は見直しの意義を強調。「大規模災害に備えた救助体制を構築するため、改正法の円滑な施行に努めていく」との意向を示した。

 国会審議で繰り返し答弁に立ってきた小此木八郎防災担当相(同3区)も、神奈川新聞社の取材に「防災・救助体制がしっかり固まり、前に進んでいくことを期待したい」と説明。救助実施市の指定基準策定に向け、都道府県と政令市を交えた検討会を「早急に立ち上げる」とし、理解を得る努力を続けていくとした。

 迅速な救助が可能になると主張する政令市に対し、指揮系統の煩雑化や支援物資先取りへの懸念を訴え続けてきた都道府県。平行線をたどった議論は、具体的な指定基準策定を見据えた実務者協議に移っていく。

 指定都市市長会会長の林文子横浜市長は「指定都市の災害対応力を活用できる仕組みができた」とする歓迎の談話を発表。会見では「市民の命、財産を守ることがやるべきこと。方向として違うものではない」と述べ、「全体の司令塔」は知事であることを強調した。

 これに対し黒岩祐治知事は「県も政令市も納得できる形で条件を詰め、いざというときに迅速に動ける形をつくっていきたい」と語り、従来の反発姿勢を転換した。決まった以上は「前向きに進む」との考えも示し、希望があれば3政令市すべてに移譲する可能性にも言及した。

 ただ、全国知事会は声明で「大規模災害時に不可欠な都道府県の広域調整機能がどう担保されるか明確でない」と改めて懸念を表明し、今後も都道府県の意見を十分反映させるよう国に強く求めていく方針を明らかにした。

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