空き家とまちづくり

 都市部近郊の住宅地に、空き家が増えている。車の入らない斜面地ばかりでない。一見利便性の高そうなニュータウンでも、人の住んでいない家がぽつぽつあるという▲それらの宅地が開発されたのは、人口が急増した1960~70年代ごろ。里山を崩し田畑をつぶしてまちが広がった。あちこちの新築の家で子どもの笑い声が聞こえていた時代だった▲時は流れ、子世代は独立。遠方に就職したり、新たな宅地やマンションに移ったり。住人の世代交代がうまくいかず高齢化した親世代が施設に入れば、住む人はいなくなる。用済みの宅地やマイホームは使い捨て? そんな言葉を思い浮かべたくはないけれど▲多くの人ががむしゃらに働いて家を建てた高度経済成長期は、とうに過ぎた。人口減少局面では住宅需要も縮小する。今まちづくりに求められているのは、宅地やマンションの新たな大型開発より、空き家の交じる既存住宅地をどう再生するかという知恵だろう▲昔ながらの風情を残す町家など、古民家に住みたいと考える人はじわじわと増えている。丁寧に手入れをしながら古い建物に住み続ける。低成長時代の一つの選択だと思う▲どんな家にどう住むか。それに連なるまちのかたちはどうあるべきか。人口減少社会の足元を見つめて問うてみる。(泉)

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