【東海道新幹線3人死傷】女性かばって男性死亡か

 県内を走行中の東海道新幹線車内で男が乗客を刃物で切り付け、男女3人が殺傷された事件で、被害女性の1人が「死亡した男性が止めに入ってくれた」と説明していることが10日、県警への取材で分かった。男性が上半身に多数の刺し傷を負っていたことも判明。県警は、無差別に乗客を襲った男が、かばった男性を執拗(しつよう)に刺したとみて詳しく調べる。

 県警は同日、死亡したのは兵庫県尼崎市の会社員(38)と明らかにした。搬送先の病院などによると、顔や首、腹などに少なくとも10カ所以上の刺し傷が確認された。首の傷が致命傷とみられ、県警は近く司法解剖する。負傷した27歳の女性は左肩などを、26歳の女性は右頭部などを切られたが、ともに軽傷だった。

 殺人未遂容疑で現行犯逮捕された愛知県岡崎市、無職の容疑者(22)は調べに対し、「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」などと供述。車両内に落ちていたなたが凶器とみられ、小型の果物ナイフも所持していた可能性がある。県警は容疑を殺人に切り替えて11日に送検する方針。

 県警によると、事件が起きたのは東京発新大阪行き「のぞみ265号」(16両編成)の12号車。2列席通路側に座っていた同容疑者は、新横浜駅を出て間もなく立ち上がり、右隣の女性(27)の左肩付近をいきなり刃物で切り付けた。女性は身をかがめて逃げ、通路を挟んで左隣に座っていた女性(26)も逃げたが、後ろから頭や背中などを切り付けられた。2列後ろに座っていた男性は女性2人をかばうように同容疑者の前に出たという。

 車掌が取り外した座席を盾代わりに「やめてください」と呼び掛けたが、同容疑者は通路にあおむけに倒れた男性の上にしゃがみ込み、無言で淡々と刃物を振り下ろし続けたという。

 入院している26歳の女性は「すぐに助けていただいたのに亡くなられた被害者の方には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」とのコメントを寄せ、男性の遺族は「突然、家族を奪われた悲しみは言葉では言い尽くせません」との談話を発表した。

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 県警は10日、新幹線の車両内に残された指紋や遺留物などを調べる現場検証を、静岡県三島市の車両基地で約4時間にわたり実施した。凶器とみられるなたを押収したほか、網棚から茶色のリュックサックを押収。中には同容疑者の財布や携帯電話が入っていたという。

新幹線内の刺傷事件で消防や警察車両で騒然とする小田原駅前=9日午後11時10分ごろ

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