小児がん深く知って 横浜の小学生、実体験から絵本制作

 小児がんへの理解を深めてもらおうと、病気を経験した小学生が発案した絵本「しろさんのレモネードやさん」が完成した。横浜市西区の栄島四郎さん(10)=同市立平沼小5年=の実体験を基に、周囲の大人や友人らと制作。「小児がんのことを多くの人に知ってもらいたい」との思いを込めた一冊は、15日に発売される。

 物語の舞台は、誰もが楽しめる架空の「レモネードゆうえんち」。四郎さんをモデルにした主人公の「しろさん」は遊園地で「レモンちゃん」に出会い、応援を受けながら闘病経験や小児がんを知ってほしいという思いを訴える。絵本では、四郎さんが実際に行っている米国発祥でレモネードを売って小児がん支援の寄付を募る取り組み「レモネードスタンド」の様子を再現。その開き方や四郎さんからのメッセージも収録されている。

 四郎さんが脳腫瘍だと分かったのは3歳の時。手術や抗がん剤治療を受け、現在も通院を続けている。四郎さんが通う作文教室を主宰する松崎雅美さん(47)=同市金沢区=に、母の佳子さん(46)が絵本について相談し、昨年6月に制作委員会が発足。松崎さんが文章を、イラストレーターの矢原由布子さん(38)=同市港南区=が挿絵をボランティアで手掛けることになった。

 資金の一部をクラウドファンディングで募ると190万円超が集まり、今年1月から作業して3千冊を制作。委員会が2千冊を買い取って一部は病院などに寄付し、残る千冊は書店で販売する。松崎さんは「病気とは無関係な人もいろいろ考えてくれている。それを励みに、孤独ではないことが(小児がんの関係者に)伝わればいい」との思いを持つ。

 絵本作りには、四郎さんんの友人らも携わった。小学2年生から中学1年生の11人が集まり、2月から書店への営業や取材依頼などの活動を行ってきた。

 「レモネードゆうえんち」のアイデアを出した川口蒼さん(10)=同市立西柴小5年=は「病気だと遊園地に行くことができないと思い、誰でも遊べるレモネードゆうえんちを考えた。いろいろな人に読んでもらいたい」。レモネードスタンドに参加している平津ひなたさん(9)=同市立東台小4年=は「『小児がんはかわいそう』と思うだけでなく、病気を経験した人に協力してほしい」と話す。

 10日には子どもたちが中心になり、小児がんを経験した仲間や医療関係者らを招き、手作りの出版記念パーティーを開く。四郎さんは「明るく楽しいパーティーにしたい。レモネードスタンドなどに大勢協力してくれて感謝している。絵本が出るのが楽しみ」と心待ちにしている。

 絵本は1512円。売り上げの一部は、病気の子どもたちに役立てるため寄付される。問い合わせは、吉備人(きびと)出版電話086(235)3456。

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