TCR EU:第3戦ベルギー、TCRインター王者のアウディがポール・トゥ・ウイン

 TCRヨーロッパ・シリーズの第3戦が6月9~10日にベルギーのスパ・フランコルシャンで開催され、WTCR世界ツーリングカー・カップにも参戦する昨季のTCRインターナショナル王者ジャン-カール・ベルネイ(アウディRS3 LMS)がレース1を制覇。WTCRへのフィードバックを期待すると同時に、同シリーズでのタイトル獲得にも意欲をみせた。

 名門トラックでのTCRヨーロッパ開催に先立ち、TCRの技術部門は2018年のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)最新改訂版を発表し、5月17日に発行されていたヒュンダイi30 N TCRのテクニカル・ブリテンを一部変更。

 最大過給圧とエンジン出力97.5%は維持されたものの、最低地上高100mmが90mmに軽減され、車高を10mm低く設定することが可能に。開幕戦勝者のターゲット・コンペティション、ドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)らが第2戦では下位に沈み「まるでSUVのようなドライブフィール」と不満を口にしていたBoPバランスに再調整を加えた形となった。

 また、今季開幕戦ではイタリア・トップラン製のスバルWRX STIをドライブしたTCRインターナショナルの2015-16年王者であるステファノ・コミニは、このイベントからTHXチームを率いて、最新のFK8ホンダ・シビック・タイプR TCRにスイッチしてのエントリーとなった。

 そんななか、予選で実力を発揮して見せたのはWTCRレギュラーでもあるチームWRT、アウディスポーツ・レパード・ルクオイルのベルネイで、プラクティスからトップタイムを記録するとそのまま予選のQ1、Q2を制して見事にレース1のポールポジションを射止めた。

 そのスタートでも危なげなくホールショットを決めたベルネイは、そのまま順調にリードを維持。フロントロウに並んだ地元ドライバーのマキシム・ポティ(コム・トゥ・ユー・レーシング/フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が唯一ベルネイにくい下がる展開に。

 その後方では、3番グリッドJSBプジョーのジュリアン・ブリシュ(プジョー308TCR)と、5番グリッドのスティアン・ポウルセン(セアト・クプラTCR)がスタートをしくじり大きくドロップし、6番グリッドのボルコビッチが3番手にジャンプアップ。8番グリッド、コミニのFK8シビックも5番手浮上に成功した。

 オープニングラップを終えてベルネイ、ポティの首位2台に対し、TCRスポーツのミゲル・アズコナ(セアト・クプラTCR)、ボルコビッチ、コミニ、そしてKCMGのジョシュ・ファイルズ(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)と実力者が追走を見せるなか、中団にドロップしたブリシュとポウルセンが奮闘。

 ブランシモンではライバルとのコンタクトでコース外へと弾き飛ばされたブリシュがなんとかコース復帰を果たしポジションを守ると、ポウルセンはダニ・クロス、クリス・リチャードのターゲット勢をまとめてかわし7番手まで復帰する。

 さらに3周目以降はファイルズ、コミニのシビック対決が激化し、4周目のバスストップシケインの攻防でコミニが前へ。しかし続くホームストレートで並んだ2台のFK8は、そのまま1コーナーのラソースへと突入。そこに漁夫の利を狙うポウルセンが加わり三つどもえのバトルに発展すると、続く6周目にファイルズのアタックに対しドアを閉めたコミニの動きにより両者はクラッシュ。ともにリタイアという最悪の結末となってしまう。

 この中団の混乱に乗じて、安定したレース運びを見せた先頭集団は大きな波乱もなく11周のチェッカー。ベルネイが自身初のヨーロッパ・シリーズ勝利をポール・トゥ・ウインで飾り、2位にポティ、3位にアズコナの表彰台となった。

 ターゲット・コンペティションのリチャーズと、リース・バーのヒュンダイi30 N TCRがフロントロウに並んだ日曜レース2は、首位争いを展開したリチャーズとブリシュのプジョー308TCRが、ファイナルラップを前に接触。

 レ・コンブで並びかけ、ケメルストレートを経てブレーキング時点でほぼ追い抜きを成功させようとしていたブリシュに対し、リチャードがわずかにタッチ。これでバランスを崩した308TCRは続くシケインを高速でカットするしかマシンを立て直すすべはなく、リチャードがトップチェッカーを受けていた。

 しかしレース後スチュワードは1秒加算のタイムペナルティをリチャードに対し言い渡し2位に降格。これにより、ブリシュ、新型308TCR、そしてJSBプジョーが初のTCRヨーロッパ勝利を記録することとなった。

 続くTCRヨーロッパ・シリーズ第4戦は7月7~8日にハンガロリンクを舞台に開催される。

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