【特集】米朝首脳会談直前、92歳首相の決意 マハティール氏(1)

記者会見するマハティ-ル氏=2018年6月11日、日本記者クラブ

 15年ぶりにマレーシア首相に復帰したマハティール氏が11日、日本記者クラブで記者会見し、米朝首脳会談について「東アジアのより良い関係に貢献する。接触の機会を持つことは非常にいい」と期待を込めて語った。1981年から22年間、マレーシア首相在任中に日本を規範とする「ルックイースト政策」を進め、復帰後初の外遊先に日本を選んだ。中国と緊密だったとされるナジブ前首相には批判的なスタンスで、発言が注目されている。日本でいうと、中曽根康弘氏(100)や村山富市氏(94)が再び政権の座に返り咲いたようなイメージだろうか。“老練”なアジアの大政治家と記者とのやりとりをまとめた。(共同通信=柴田友明)

「接触は歓迎」

 「想定外でしたが、再び首相に就任しました。今、国の方向性を正しく戻そうと努力している。再び民主主義の国に戻す。前政権が積み上げた債務に向き合い、国を再建しなければならない。またすべての国と友好関係を持つということに立ち戻らなければならない。イデオロギーにかかわらず、すべての国と交易をして、どこのブロックの一員になろうということは考えていない。できる限り中立であろうと考えている。報道の自由の確保、国内では国民が言いたいことを述べる権利を提供する。今あるような抑圧的な法律は解消して新たに法律を整備していく」。92歳のトップはしっかりした足取りで会見場に入室して、母国が直面する課題と自らの政治信条をシンプルに語った。

 ―米朝首脳会談についての注目点は?北朝鮮という冷戦から取り残された国が非核化に応じて世界経済に入ってくる可能性は?

 「どのような機会でも(米朝首脳が)会うことは世界にとっていいことだ。対立、敵対よりいい。緊張がほどけ、アジア地域で日中、日韓、日朝の関係がよくなると思う。各国間の通商貿易が拡大する。一部の関係者は北朝鮮の態度は本当のものではないという疑いがある。あまりにも劇的に態度を変えたからだ。それでも対立に比べれば、いかなる接触も歓迎だ。マレーシアでよく言われることだが、相手を知らなければ好きになることはできない」

「中国の存在」避けられない

 ―マレーシアの前政権は中国との緊密だったが、中国が進める「一帯一路」についてどのようなお考えですか?首相を一度辞めて大きく変わったことは中国の台頭で、日本との経済力も逆転した。中国とどのようなお付き合いをしていくか?

 「中国の総理が1974年にマレーシアを訪問して以来、両国はいい関係を構築してきた。(わが国は)中国という存在を避けることはできない。どの国々と関係を持とうとしても、中国は必ず関連性を持ってくる。中国がまだ貧しかった時代にもわれわれは中国のことを警戒して心配。豊かになっても、まだ警戒し心配している。強力な国家であることは変わらない。好きか嫌いかを問わず、対応していかなければならない。前の政権は中国からかなりの融資を受け入れ、しかも巨額な金額を借り入れた。配慮に欠いた」

 ―日本は高齢化社会になっています。92歳で(政界に)復帰されたことは大変勇気を与えてくれるニュースです。

 「高齢化する、年を取るとは二つのタイプがある。一つは単に年齢そのもの、もう一つは生物的な変化。私の年の取り方は後者の方で、そのスピードが遅めだ。現にここで皆さんの質問を聞き取り、回答できている。ぼけていない。正直に言えば私もゆっくりしたい。しかし、国民の期待と希望を裏切るわけにはいかない。確かに年を取れば、休みたいと思うが、休めばすぐに力が弱くなって、いろいろな能力が失われる。できるだけアクティブであろうということをアドバイスしたい。使わなければ、機能が衰えるのが法則だ」

 【特集】米朝首脳会談直前、92歳首相の「覚悟」(2)に続く

握手する北朝鮮の金正恩労働党委員長と(左)とトランプ米大統領=12日、シンガポール(AP=共同)

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