「パラグアイ戦でここは要チェック、日本代表が抱える守備の大きな問題点とは」

コロンビアとのグループリーグ初戦まで後一週間。

日本代表は最後の強化試合としてパラグアイ戦に臨むわけだが、そこでの注目ポイントとしては、大きく分けて以下の三点がよく挙がっている印象だ。

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①)(予告通り)これまで出場機会が限られている選手を起用するのか
②)閉塞感を打破するような可能性を感じさせてくれる選手が登場するのか
③)ガーナ、スイスとの試合で見られた課題が解消されるのか

そして、その中で個人的に特に気になっているポイントが③である。

ということで、今回は③の中からある大きな問題点を一つ抽出し、言及したいと思う。

それは、ガーナ、スイス戦共に機能不全に終わった「前線からの守備」についてである。

全くハマらなかった前線守備

まず、前提として、上述のように現在の日本代表は守備が機能不全に陥っている。

球際の激しさ、マークの受け渡し、ドリブラーやロングボールに対しての対応諸々…初歩的なレベルでいくつも課題が見られるためだ。

ガーナ戦ではチーム全体が後ろに重心が偏り、高い位置でボールを奪えなかった問題点がはっきりと見え、実際そこから失点シーンへと繋がった。

ガーナの先制点はFKによるものであったが、そのきっかけとなったのが左サイドバックから最前線へ送り込まれたパスであった。

そして、この時、大きな問題が発生していた。「ボールホルダーに対して全くプレッシャーがかかっていない状態」だったのでる。

このシチュエーションにおけるポジションを考えると、本田圭佑がボールを奪いに「圧」を掛けるべきであったが、その判断が遅れ、動き出しも鈍重。最終的にガーナの選手は「ノープレッシャー」でロングボールを蹴られる環境を獲得。

そして、ガーナに自由を与えてしまった日本は危険地帯であるエリアにボールを入れられ、その後のFK。そして失点へとリンクしたというわけだ。

無論、槙野や守備陣全体の対応にも問題があり、本田の責任が全てというわけではない。

だが、本大会で同じくファールを犯したら、よりFK能力に優れたひしめくグループリーグの対戦相手の餌食となることは間違いない。

また、ロベルト・レヴァンドフスキ級の選手であれば、ファールはもらわずともそのままゴールまで持っていけるだろう。

スイス戦では挑戦したが…

打って変わって、スイス戦で大きく変わった(工夫しようと試みていた)のが、守備方式を整備しようとしたことである。

「前線からの守備」について改めて取り組もうとしたのだ。

その結果、このスイス戦では少なくとも「前からボールを奪おう」、「ボールホルダーにプレッシャーはかけよう」という姿勢は見られた。だが、そこに結果はついてこなかった。その試みが「不発に終わった」ためだ。

下記は、前半4分のスイスのスローインに対しての動きを図示したものである。

まず、シュテファン・リヒトシュタイナー(赤の2番)がグラニト・ジャカ(赤の10番)に対してボールを投げるのだが、この時点で、そのボールに対して「誰がいくのか」が不明瞭であった。

位置的には本田はヴァロン・ベーラミ(赤の11番)を見ているため、大島僚太がさらに前に動いてプレッシャーをかけるべきだったのか、もしくは本田を前に押し出すのが適切かは難しい所であるが、いずれにせよ、完全に守備組織は機能していなかった。

この後、ジャカはボールをノープレッシャーで受け取り、左サイドから中央に落ちてきたブレール・エンボロ(赤の7番)に対して縦パスを入れることに成功。

さらに、このエンボロに対してのマークの受け渡しも出来ておらず、原口元気と長谷部誠が共に「見ている」だけの状態に。

そして、エンボロは中央へドリブルでボール運ぶと、マリオ・ガヴラノヴィッチ(赤の18番)にクサビを打ち、ガブラノヴィッチは左サイドからペナルティエリア内に飛び出してきたレモ・フロイラー(赤の8番)にスルーパスを送った。

このシーンではそのラストパスが少々大きく、飛び出した川島永嗣がキャッチしたが、一歩間違えていれば失点となっていたことは改めて言うまでもないだろう。

「継続」か「断念」か

このような「まずい状況」は上述だけではなく、前半7分にもあった。

前からの守備を仕掛けるが、その他が全く連動せず、「ただ徒労に終わる」という最悪の展開だ。

ファビアン・シェア(赤の22番)が攻撃を組み立てようとした際に大迫勇也がチェイシングを行うと、シェアはこれを嫌い、ボールをマヌエル・アカンジ(赤の5番)へ。

さらに、そのアカンジに対して本田が詰めるが、アカンジはDFラインに落ちてきたボランチのジャカに展開してプレッシャーを回避。

つまり、本田の追い込みにより、「二本目の矢」までは打てたのが、この動きに対してその他の選手が呼応がなく、スイスに全くダメージを与えられなかった格好だ。その止めには「三本目の矢」が必要不可欠だったのが、それを打てず仕舞いに終わったわけである。

結局、ジャカは、余裕をもってボールを持ち運び、右サイドに構えていた「崩しのキーマン」であるシェルダン・シャキリ(赤の23番)にロングパス。

最終的にはこれもゴールこそ至らなかったが、日本代表にとっては「エースに敵陣深くまで切り込まれる」というピンチの一歩手前であった。

はたして、パラグアイ戦でこの日本代表の「拙いプレッシング」に改善が見られるのだろうか。

ここまでの惨状を見て、前からのプレッシングを封印し、ボール奪取エリアを引く位置に専念するという可能性はもちろんあるだろう。いらゆる「ベタ引き」からのロングカウンターに主眼を置く方法だ。

だが、このままの戦い方を続けるのであれば、チームとして改善することは不可避。

パラグアイ戦では「前からの守備を続けるのか」「連動したプレッシングを見せられるか」、「高い位置からボールを奪って攻撃に繋げられるか」に注目してみてはどうだろうか。

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