アメリカでも「野球離れ」!? 昨年から見るMLB観客動員数の変化

大産業として成り立つMLB「野球離れ」の傾向か【写真:Getty Images】

ア・リーグでは東地区と中地区に大きな変化

 MLBでは観客動員数の減少が話題になっている。特定の球団では激減し、MLB関係者は危機感を募らせている。

 野球はアメリカのナショナルパスタイム(国民的娯楽)として長い歴史を有するが、近年は「北米4大スポーツ」の他の競技の進出によってシェアを奪われつつある。そんな中で、MLBは2017年には約7316万人(1試合あたり3万0132人)を動員。競争が厳しい中、何とか横ばいの数字を維持してきた。

 しかし、今年は同時期の比較で▲6.5%と、明確に観客動員を減らしている。これは全球団が一様に下がったのではなく、一部の球団の観客動員が激減したためだ。

 全30球団の6月10日終了時点の平均観客動員を、前年の同じ試合数消化時点と比較すると次のようになる。

【アメリカン・リーグ】
○東地区
ヤンキース 31試合 3万8838人→4万1315人(6.4%)
レッドソックス 34試合 3万5669人→3万4524人(▲3.2%)
ブルージェイズ 35試合 3万8687人→2万7269人(▲29.5%)
オリオールズ  28試合 2万8000人→1万9880人(▲29.0%)
レイズ 28試合 1万4907人→1万3681人(▲8.2%)

○中地区
タイガース 37試合 2万8460人→2万1067人(▲26.0%)
ツインズ 34試合 2万2179人→2万2188人(0.0%)
ロイヤルズ 31試合 2万6036人→2万0057人(▲23.0%)
インディアンス 31試合 2万1988人→1万9079人(▲13.2%)
ホワイトソックス 29試合 2万1051人→1万6906人(▲19.7%)

○西地区
エンゼルス 35試合 3万6202人→3万7074人(2.4%)
アストロズ 33試合 2万9055人→3万5333人(21.6%)
レンジャーズ 36試合 3万2349人→2万7863人(▲13.9%)
マリナーズ 32試合 2万4669人→2万4377人(▲1.2%)
アスレチックス 34試合 1万7980人→1万5510人(▲13.7%)

アメリカン・リーグ 488試合 2万8012人→2万5328人(▲9.6%)

 東地区、中地区の落ち込みが激しい。オリオールズは東地区最下位で勝率2割台に喘いでおり、成績不振が響いたと思われる。中地区最下位のロイヤルズも同様だが、東地区3位のブルージェイズ、中地区2位のタイガースの観客動員も激減している。

 ブルージェイズはカナダのトロントが本拠地。モントリオール・エクスポズが業績不振でワシントンDCに移転してナショナルズになったため、今やカナダ唯一のMLB球団だが、観客動員が減少すれば、経営危機に陥る可能性もあろう。

 ア・リーグではっきり数字が上向いているのは、昨年のワールド・チャンピオンのアストロズだけ。“小さな巨人”アルトゥーベを擁し、データ野球を駆使して世界一に上り詰め、人気が沸騰している。

 大谷翔平が入団したエンゼルスは微増。「オオタニ効果」がなければ減少に転じていた可能性が高い。大谷のDL入りで、観客動員はどう動くだろうか。

ナ・リーグの観客動員数の変化は…

【ナショナル・リーグ】
○東地区
メッツ 34試合 3万0421人→3万0724人(1.0%)
ナショナルズ 32試合 3万1257人→3万0169人(▲3.5%)
ブレーブス 28試合 2万9307人→3万0896人(5.4%)
フィリーズ 31試合 2万6916人→2万5257人(▲6.2%)
マーリンズ 31試合 2万0490人→1万0697人(▲47.8%)

○中地区
カージナルス 33試合 4万3034人→4万1328人(▲4.0%)
カブス 32試合 3万8511人→3万7866人(▲1.7%)
ブルワーズ 29試合 2万8753人→3万3323人(15.9%)
レッズ 34試合 2万2063人→1万8746人(15.0%)
パイレーツ 33試合 2万3112人→1万6233人(▲29.8%)

○西地区
ドジャース 34試合 4万4580人→4万5843人(2.8%)
ジャイアンツ 30試合 4万1650人→3万8835人(▲6.8%)
ロッキーズ 30試合 3万5140人→3万5378人(0.1%)
パドレス 39試合 2万5138人→2万5191人(0.0%)
ダイヤモンドバックス 32試合 2万2691人→2万5832人(13.8%)

ナショナル・リーグ 482試合 3万0809人→2万9665人(▲3.7%)

 前年から観客動員が半減しているのがマーリンズだ。デレク・ジーターら新経営陣は大幅なコストカットを断行。チームは解体モードに入り、本塁打王のジャンカルロ・スタントン、ディー・ゴードン、マルセル・オズナ、クリスチャン・イエリッチと主力級を次々と放出。これがファンの反感を買って惨状を招いた。

 中地区では、やはり生え抜きスター選手のアンドリュー・マカッチェンをジャイアンツへ放出したパイレーツが30%近い減少となっている。

 ナ・リーグはこの2球団の落ち込みを除くと▲0.2%とほぼ横ばいだ。

MLB 970試合 2万9402人→2万7483人(▲6.5%)

 アメリカン・リーグは東地区と中地区で地盤沈下が起こっている。このためにトータルでも1割近い観客減、ナショナル・リーグはマーリンズ、パイレーツを除けば、ほぼ横ばいと言える。

 例年、MLBはペナントレースの深まりとともに観客動員が増加する傾向にある。今、動員が不振のチームでも、これからの頑張り次第で挽回できる余地は大いにある。

 しかしながら、全体的に見れば、MLBのマーケティングはさらなる取り組みをすべき時期に来ているのかもしれない。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

© 株式会社Creative2