<レスリング>【全国中学生選手権・特集】1年間白星街道を走り続けた藤波朱理(三重・西朝明3)が全中初優勝! 

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

監督でもある父と藤波朱里

 藤波は“あかり”もいます! 全国中学生選手権の女子52kg級は、藤波朱理(三重・西朝明3)が決勝で長谷川姫花(大阪・堺リベラル2)を10-0のテクニカルフォールで下した。

 準決勝戦では伊藤渚(三重・東員一2)との熾烈な同門対決を制し、全試合無失点での優勝が評価され、最優秀選手(茨城県知事杯)も受賞。1年時に40kg級で3位、2年時は2位。最終学年でついに初の栄冠をつかんだ藤波は「やっと優勝できてうれしい」と満面を笑みを浮かべた。

 昨年は伊藤海(現網野高)に敗れて優勝を逃し2位。キッズ時代からほぼ無敵の伊藤に歯が立たず、「ずっと海ちゃんに負けていて、その壁をどうやって超えるかばかり考えていました」。

 伊藤は、小学生時代は男子の部に出て優勝するなどスピードに加えてパワーもある選手。対して藤波は技術を駆使した柔らかいレスリングを展開するタイプ。敗因は「力が足りない」と自覚し、父でありコーチの藤波俊一監督は「以前に比べて体力トレーニングを多くするようになった」と話し、体作りに励み克服に励んでいた。

悔しさを忘れないため、トイレの壁に2位の賞状

 負けた悔しさを忘れないように、2位の賞状をトイレの壁に貼り、1日に何度もその賞状と向き合う時間を作った。転機となったのは昨年7月に行われた関西少年大会だった。奇しくも伊藤と再戦を果たした藤波は大接戦を制し、ついに伊藤から初白星を挙げて優勝を飾った。「やっと海ちゃんに勝てて、自信になりました。課題だったパワーもついてきました」。

決勝で闘う藤波

 その大会から現在までの1年間、全日本女子オープン選手権、全国中学選抜選手権、今年に入ってもクリッパン女子国際大会(スウェーデン)、ジュニアクイーンズカップ、JOC杯と連勝記録を伸ばし、5月にはアジア・カデット選手権(ウズベキスタン)で金メダルを獲得した。

 伊藤に勝ったのが昨年7月。その1ヶ月後、藤波にとって大きな出来事が起こった。兄の藤波勇飛(山梨学院大)が初出場の世界選手権(フランス)で銅メダルを獲得したことだ。「目標は兄を絶対超えること。兄は技とかたくさん教えてくれる。早くあのレベルまで行きたい」と新しい目標を掲げたことが、この1年の飛躍につながった。

 大会最終日には、兄の勇飛も姿を見せ、セコンドには父と兄が勢揃い。家族の応援が藤波の追い風になったことだろう。「これからも一つ一つ、目の前の大会を頑張り、高校3年生のときに迎える三重国体を兄とともに戦いたい。藤波って、勇飛だけじゃないぞって見せたいです!」 

兄・勇飛からもパワーをもらった

 

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