細やかに演じる人間物語 劇団「かに座」  22~24日/神奈川区で公演

 横浜市西区を拠点に活動を続けるアマチュア劇団「かに座」の第116回公演「橙色(だいだいいろ)の噓(うそ)」(作・平石耕一)が22~24日、横浜市神奈川区民文化センターかなっくホールで開かれる。描くのは、家族を取り巻く人間物語。一つのうそを通じて映し出される繊細で複雑な心情を、役者たちが細やかに演じる。

 舞台は東京郊外にある眼科医院。廃院を決めた68歳の院長は、30年間共に勤めた看護師に、感謝を込めて「蓼科の別荘のコテージを受け取ってほしい」と申し出る。一方、過去に夫を亡くしている看護師は「院長と再婚したと友人にうそをついていた。2、3日夫婦を演じてほしい」と思わぬ告白をする-といったあらすじだ。家族や友人を交え、人のいじらしい心や思いやりが温かく描かれる。

 平日夜。横浜市西区の稽古場では、共同演出と役者を兼ねる代表の馬場秀彦(61)が、団員の声の大きさから表情の作り方までを細かく指導していた。「発声と滑舌。基礎をきっちり押さえるのがかに座の基本」と自負する。

 今回の公演は医院とコテージの二つの場面で展開。「10分の休憩時間内に舞台ががらりと変わるさまも見どころの一つ」という。

 1950年、横浜の高校の演劇部OBが中心となって演劇研究会を創立。ほどなくして名前を変え誕生したのがかに座だ。20~70代の幅広い年代が、年に2回以上の公演をこなす。

 喜劇や悲劇、風刺劇など作品のジャンルは多岐にわたるが、一貫して「生きる」をテーマにしている。

 本公演は院長と看護師だけでなく、父と娘といった家族のやりとりも注目すべき描写。馬場代表と共に演出を担う益田敏雄(70)は「親子の関係など、『そうだよね』と共感して見てもらえると思う。笑いつつぽろっと涙が流れるような、そんな心に響く舞台にしたい」と話している。

 前売り1500円、当日2千円。高校生以下は前売り千円、当日1300円。公演時間などの問い合わせは、かに座電話045(311)4616。

劇団かに座「橙色の噓」の稽古風景=横浜市西区

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