南島原市の未来図 松本市政2期目へ・上 産業振興 疲弊する業界 支援強化へ

 現職、新人による一騎打ちとなった南島原市長選は、市政の継続を訴えた松本政博氏(70)が再選を果たした。人口減少に歯止めがかからない中、産業振興など直面する難題にどう取り組むのか。松本市政2期目の課題を考える。
 今月上旬、竹市製麺(北有馬町)のそうめん工場。2代目、竹市和生さん(32)が、カーテンのように垂れ下がった細い麺がくっつかないよう、手際よく隙間に長い箸を通していた。
 父親が始めた地元特産の「島原手延べそうめん」作りを2015年に継いだ。手延べ製麺技術を応用したラーメンの麺を開発するなど試行錯誤しつつ、福岡や関東の商談会などで地道に販路を拡大している。
 だが、地元業界の現状は厳しい。市などによると、市内製麺業者数は、13年には300軒以上あったが、現在は250軒近くにまで減少。平均卸単価もトップの「揖保乃糸(いぼのいと)」(兵庫県)の8割未満で、ブランド力向上や後継者不足といった課題が横たわる。
 松本市政は1期目で、県や民間などと連携したそうめんの海外輸出促進、廃校跡でそうめん料理などを提供する「南島原食堂」開店などに取り組んだ。県島原手延そうめん振興会(南島原市)の白石保会長(72)は「業界の危機感を共有し、積極的に取り組んでくれている」と評価するが、まだ道半ばだ。
 地元製麺業者は家族経営など、多くが零細。竹市さんは自助努力だけでは限界だとし、「基幹産業の活性化のため、補助金やPRの面で公的支援をより充実させてほしい」と訴える。加えて、市内にはそうめん専門料理店もほとんどない。竹市さんは「『そうめんの町』と言うわりに店が少ないと観光客が残念がり、逆効果になる」と懸念。そうめん振興に向けた2期目の施策に注目している。
 一方、産業振興や企業・観光客誘致などには、脆弱(ぜいじゃく)な道路網の改善も欠かせない。原城跡を含む「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録が見込まれ、九州新幹線長崎ルート開通が予定されているが、地元では「このままでは世界遺産登録、新幹線開通効果もおぼつかない」との声は少なくない。
 こうした中、市自治会長連合会は、南島原から長崎、諫早へのアクセス改善につながる「愛野・小浜バイパス」の早期実現を求める署名計約3万5千人分を雲仙市の団体と一緒に集め、南島原、雲仙両市長も同席の上、国に提出した。栗田勝敏会長(77)は「住民にとって切実な問題。産業振興だけでなく、災害や緊急時に必要な『命の道』だ」と強調する。
 取材に松本市長は、「疲弊する基幹産業の支援やPR強化は重要。長年の懸案である道路網整備とともに促進していく」と述べ、2期目の施策の柱の一つにする考えだ。道路網整備を進め、産業振興や世界遺産、世界ジオパークを生かした観光客誘致、まちづくりにどうつなげていくか、課題は多い。

麺に箸を通す作業をする竹市さん=南島原市北有馬町

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