【MLB】「日本で何が…」 米で大活躍の元Gマイコラス直撃「小林と成長した3年だった」

“逆輸入”で大活躍するカージナルスのマイルズ・マイコラス投手【写真:AP】

4年ぶり米復帰のマイコラス、7勝2敗&防御率2.43と絶好調

 元巨人のマイルズ・マイコラス投手が、4年ぶりのメジャーで快投を続けている。昨オフにナ・リーグ中地区のカージナルスと2年1550万ドル(約17億900万円)の契約を結んだ29歳右腕は、開幕以来ここまで13試合に先発して7勝2敗、防御率2.43の好成績。この活躍ぶりに、米国内では「今季屈指のサプライズ」と驚きの声が上がっている。

 2015年から3年を過ごした巨人では、62試合で31勝13敗、防御率2.18という圧倒的な数字を残した。だが、2012年にメジャーデビューしたパドレスでは2年で27試合に投げたが、いずれもリリーフ登板で2勝1敗、防御率3.44。日本へ向かう直前の2014年には、レンジャーズで10試合に先発しながら、2勝5敗、防御率6.44と苦しんだ。それが、今季はこの快投だ。かつての姿を知る人が「日本で一体何があったんだ」と首をひねるのも無理はない。

「日本で何があったのか、って?(笑) 実は技術面で変えたことはないんだ。一番大きく変わったことは、マウンド上の心構え、いや野球に限らず、生活全般での気持ちの持ち方だと思う。自分の置かれた状況をありのままに受け止め、そこでどうしたらベストを尽くせるか考え、実行する。余計なことは考えずに、手に持ったボールを捕手のミットを目掛けて投げる。その繰り返しが、ラッキーなことにいい結果につながっているんだ」

 ブレイクするきっかけを掴みたい。そう考えた時に思い出したのが、レンジャーズでチームメイトだった元広島、コルビー・ルイスの話だった。異国の地で、あらためて野球に向き合ってみるのもいいかもしれない。ローレン夫人の後押しもあり、踏み切った日本行きは、今では大きな財産と言える。

成長を助けたマシソンとの出会い

 日本では、巨人のブルペンを支えるスコット・マシソンに助けられたという。

「メジャーでは当たり前でも、日本では異質に映ることもある。何が受け入れられて、何が受け入れられないのか。チームで何が求められているのか。そういった基本を教えてもらったり、ピッチングに関しても打者のタイプや対戦相手の傾向をアドバイスしてもらったり。マシソンのおかげで1年目からスッとチームに溶け込めた。まずは、あるがままを受け入れること。それを教えてくれたのも彼。マシソンとの出会いは、僕の野球人生の中で本当に重要なものになったよ」

 日本に行く前は、95マイル(約153キロ)を超える速球を持ちながら、制球を乱してカウントを不利にし、結局四球を与えることが多かった。パドレスでもレンジャーズでも、1イニングあたりの与四球数+被安打数を示すWHIPは1.400超。三振を奪うものの四球も多く、走者を溜めたところで痛打されるパターンに泣かされた。

 巨人移籍後にまず心掛けたのは「初球ストライク」だ。速球を無鉄砲に投げ込むのではなく、常に優位なカウントに立てるように、速球、スライダー、カーブ、チェンジアップを駆使して投球を組み立てる。そのためには、投げ終えた球に後ろ髪を引かれることなく、次の打者との対戦に気を急くことなく、今、手に握る1球に集中することに努めた。特別なことは何もない。文字通りの「原点回帰」だったが、目先の結果を出すことに囚われていたメジャーでは、いつの間にか忘れていたことだ。

 元々負けん気の強い性格だ。今季黒星を喫した2試合では、登板中の援護点は「0」だった。それでも「打線が何点取ってくれようが関係ない。自分の仕事は失点しないこと。失点したことが悔しいんだ」と話すほど。だが、物は考えようだ。アグレッシブな性格を自分で制御できれば、「初球ストライク」を取りながら、優位なカウントで勝負を進めるための大きな武器となる。

気になる小林の活躍「今年は打撃でも大活躍しているって聞いたよ」

 2015年5月28日。東京ドームの西武戦で8回10奪三振無失点とし、巨人のマイコラスとして初勝利を挙げると、自分の投球に自信が芽生えた。そこから3年間で見せた活躍は、ご存じの通り。制球難から自滅する姿は消え、打者との駆け引きで主導権を握る、四球の少ない圧倒的な姿を手に入れた。こうして結果を残しながら積み上げた自信は、4年ぶりのメジャー復帰となった今季も継続。少しのことでは崩れない、確固たるものとなった。

 今でもマシソンとはこまめに連絡を取り合い、巨人の戦いぶりやチームメイトの近況を聞いている。「彼と一緒に成長した3年だったかもしれない」という捕手・小林誠司の様子は特に気になるようで、「今年はバッティングでも大活躍しているって聞いたよ」と嬉しそうに目を細める。

 髪の毛を短く整え、ヒゲもさっぱり剃ったクリーンカットな巨人時代から一変、今はロングヘアに口ヒゲを蓄えるワイルドな風貌でマウンドに君臨する。外見こそ来日前と同じスタイルに戻ったが、投手として、いち社会人として、4年前とは比べものにならないくらい成長した自負を持つ。

「野球はメンタルゲーム。勝負の大半は、メンタルの持ち方で決まってくると思う。特にピッチャーはね。日本という異国の文化に順応できたこと、巨人で結果を残せたこと。そこで得た自信こそ、今季僕がメンタル面で強くあれる1つの要因だ。あの時、日本に行く選択をして本当によかったよ」

 13試合を投げ終えて、今季WHIPは0.961と1回あたりに背負う走者の数は1人に満たない。同時に、9回あたりに与える四球数は0.95とナ・リーグ最少、メジャー全体を見てもインディアンスのサイ・ヤング投手コーリー・クルーバー(0.90)に続く2位につけている。まぐれではない。そう思える自信がある。

 周囲の評価が「今季屈指のサプライズ」から「納得の活躍」として定着するように、マウンドで地道に結果を残し続ける。

(Full-Count編集部)

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