【工場ルポ】〈熱間、精密打抜金型メーカーメイトク北海道・本社工場〉素材から補修まで一貫対応 大型品ニーズの捕捉狙う

 自動車部品メーカーによる金型の現地調達ニーズ拡大に対応し、名古屋特殊鋼(本社・愛知県犬山市、社長・鷲野敦司氏)が12年に設立したメイトク北海道(社長・田中隆氏)。事業開始以来順調に業績を伸ばし早々に単独黒字化を果たす中、かねてから建設を進めていたグループ最大規模の新工場が完成、大型・精密金型事業が近く本格始動する見通しとなった。設備増強を通じて素材から補修までのワンストップ体制を構築、他社との差別化を図りながらさらなる数量増を狙う同社本社工場の今をルポする。(佐野 雄紀)

 メイトク北海道は勇払郡安平町の工業団地内、約1万3千平方メートルの用地を購入し、熱間鍛造用および精密打抜用金型の加工を手掛ける現地子会社としてスタート。建屋は既存のものを改修、設備も本社工場などからの移設で賄うことで初期投資を抑制した。

 設立以来、トヨタ北海道をはじめとする自動車関連ユーザーの旺盛な需要を受けて繁忙状態が続いた。昨秋以降部品のモデルチェンジなどが影響してやや増勢に一服感が生じているものの、今後新規案件の立ち上がりに伴い再び繁忙感が強まる見通しだ。

 発足時にリニューアルした同建屋、第1工場は約460平方メートルの棟内にワイヤ加工機を含めた設備5台を置き、放電加工を行う。形状測定、CAD/CAM機能も備えるほか、これまで恒温室として使用していたスペースを今後改装し事務所とする考え。

 ニーズ増加に対応して、2014年に増設した第2工場の建屋面積は約500平方メートル。ここでは汎用フライスやマシニングセンタ(MC)4台での切削や、3台の機械による平面研削、外径・内径用の設備1台による研磨を担当する。

 相次いで受注を獲得する一方、大規模な設備投資を実施するユーザー、鍛造事業を始めるユーザーなどの要請により、近年大型製品の需要が高まる傾向にある。設立当初から大型品への領域拡大を視野に入れていたが、製造スキル、加工能力とも十分ではなかった。

 スタート時6人だった社員を増員しながら教育を進めるとともに、昨年大型品を手掛ける門型マシニングセンタを設置するための新工場の開設を決断した。恒温室も完備して超高精度品にも対応するこの工場が第3工場だ。

 第3工場は4月上旬に完成した。建屋は名古屋特殊鋼グループで最大級の1400平方メートルと広く、同社が大型製品加工、補修事業を将来にわたって段階的に伸ばそうとする意気込みが垣間見える。

 ここに置くのが門型5軸MCで、本社工場およびインドネシア現地法人で保有するものと同型機。加工品目はそれぞれ異なるが、非常時での代替生産が可能となる。およそ2千ミリ×4千ミリ、450ミリ径の製品加工に対応する同機は7月にも本稼働に移行する。

 生産効率化を目的に、同所には第1、第2工場からMC(各3軸)を計4台(横型1台、縦型3台)移すとともに、本社工場から両刀など複数の面削機を移設。20度前後に保つ恒温室にもMC、平面研削盤を2台ずつ配置している。

 また、国内外グループで事業展開する補修溶接もここで行う。製品を予熱炉で焼き戻し以下の温度まで熱し、専用のヒーターで保温しながら溶接作業をすることで、硬度などの成分を守りながら高い寸法精度でメンテナンスする。金型補修は従来本州の業者へ依頼せざるを得ず、時間とコストを要していた。これを道内で完結できる強みをPRし、実績を伸ばしたい考えだ。

 さまざまな機能を備える新工場だが、依然スペースには余裕が残る。同社はまず現在の設備体制で受注実績を伸ばしながら、需要動向を見極めた上でさらなる設備増強を検討する方針。

 大型品の加工、補修事業を本格展開する準備が整った上、需要環境にもフォローの風が吹く。メイトク北海道は今後、一貫体制を武器に受注実績を伸ばし続けるだろう。

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