輸入チーズ好調 横浜港39年連続トップ シニア層の消費拡大

 チーズの輸入が伸びている。近年は健康機能が再認識されたこともあり、主に酒のつまみとしてシニア層を中心に消費をけん引。日本のチーズ業界は約8割を輸入に依存しており、横浜港は輸入数量、金額とも全国の4割を占め、いずれも39年連続でトップを誇る。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の批准・発効で関税引き下げが実現すれば輸入がさらに増え、多彩なチーズが気軽に味わえそうだ。

 横浜税関によると、2017年の全国の輸入数量は前年比5・9%増の27万3千トン、金額は22・6%増の1303億5400万円と順調に推移した。全国シェアをみると横浜港は数量で43・4%、金額で42・7%を占めた。現在の手法での統計が始まった1979年以降、ともに39年連続で1位で、2位の神戸港、3位の川崎港を大きく引き離している。

 横浜港で輸入実績が高い理由について、同税関は、古くから乳製品を扱う低温倉庫が立地するほか、大手乳業メーカーの工場が県内にあるためとみている。

 森永乳業の担当者は、シニア層による消費拡大がチーズの輸入が順調に増えている要因に挙げる。定年退職を迎えた「団塊の世代」が自宅で酒を飲む機会が増えるようになり、おつまみとしてチーズを食べる機会が増えている、という。

 同社の商品では「無垢(むく)」など従来よりも濃厚な味に人気が高まっている。「クリームチーズにかつお節としょうゆを掛けたり、ワサビしょうゆに合わせるとおいしい」などとアレンジメニューも周知が進んでいるという。

 チーズの健康機能への関心の高さも消費を後押ししている。国内に流通する全量を横浜港で扱っている米国産粉チーズ「クラフトパルメザンチーズ」について、同社担当者は「普段の料理に栄養価値を高めることが可能。みそ汁に振りかけるなど新たな発想で幅広く使われている」と説明する。

 国別での輸入先は全国、横浜港とも欧州が全体の3分の1を占めるが、欧州に比べると、日本は10分の1の消費量にとどまっており、「日本はまだ伸びていく可能性がある」と担当者。日欧EPAが発効すれば、欧州産チーズに課せられた30%ほどの関税が段階的に低減されることで欧州産のチーズが安価で提供できるようになる。

 担当者は「まだ日本で知られていない多くの種類のナチュラルチーズを紹介していきたい」と意気込んでいる。

輸入されたパルメザンチーズを検査する横浜税関職員=横浜港・大黒ふ頭

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