北朝鮮に続きロシアでも融和へかじ切るトランプ大統領

By 太田清

 

2017年11月11日、ベトナム中部ダナンでのAPEC首脳会議の記念撮影で、言葉を交わすロシアのプーチン大統領(左)とトランプ米大統領(タス=共同)

 トランプ米大統領はなぜこれほどロシアのプーチン大統領への肩入れを強めるのだろうか。そんなことを感じさせるニュースが相次いだ。ロシアを先進7カ国(G7)に復帰させろと唐突に主張したと思ったら、一部報道によると、ロシアのクリミア併合を容認。また、側近の反対を無視してプーチン大統領との会談を強引に推し進めた。反ロ姿勢が強い与党共和党や国内の保守派の反対を押し切って、北朝鮮に続きロシアとの関係でも融和へとかじを切ろうとしている。 

 トランプ氏はカナダで行われたG7首脳会議(サミット)前、世界の問題を解決するため「好き嫌いに関係なく、ロシアを交渉のテーブルに着かせる必要がある」とG7にロシアを復帰させるべきだとの考えを示した。ロシアは1990年代にG7に参加したが2014年のウクライナ領クリミア併合を受け、参加資格は停止され、現在はG7から除外されている。 

 一方、米ニュースサイト「バズフィード」によると、トランプ氏はサミットの夕食会の席で、ウクライナ南部クリミア半島について「ロシア領だ。なぜなら住民すべてがロシア語を話すからだ」と併合を容認するかのような発言をした。トランプ氏はさらに、G7の各国がロシアと対立するウクライナに肩入れしている理由が分からないとした上で「ウクライナは世界で最も腐敗した国の一つだ」とも指摘した。 バズフィードはトランプ氏の発言が単なる冗談か、またはクリミア併合を戦後の国際秩序への重大な侵害として、厳しい制裁を続ける米国の外交政策の転換につながる動きなのか不明だとしている。

 その後、12日の米朝首脳会談を挟み、トランプ氏は15日には、プーチン氏と今夏に会談する可能性があると明らかにした。G7へのロシア復帰を再び主張した上で「オバマ前大統領はプーチン氏が嫌いだった。ロシアとは仲良くした方が、しないよりはるかにいい」と強調。米ロ首脳会談を巡っては、ロシアのペスコフ大統領報道官も開催候補地としてウィーンが検討されたと明らかにしていた。 

 米ロ両首脳は昨年11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたベトナムで短時間の会話をしたが、正式会談は見送られた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、トランプ氏はその後もプーチン氏との会談が必要と主張し、「プーチン氏をホワイトハウスに招きたい」と語ったが、国家安全保障会議(NSC)などの政府高官は会談の必要性を疑問視し、「トランプ大統領の要請は命令ではない」と受け取る形でこれを無視したという。 

 結局、トランプ氏は3月、ロシア大統領選当選への祝意を伝えるためプーチン氏に電話した際、一部側近や国務省の反対を押し切り、プーチン氏をホワイトハウスに招き首脳会談を行うことを提案。この際は、「現在の両国関係の元では首脳会談の開催を協議するのは困難だ」(ウシャコフ・ロシア大統領補佐官)とのロシア側の消極姿勢でお流れとなっていた。トランプ氏はかねてから、シリア問題やウクライナ紛争など世界規模の問題を解決するためには、ロシアとの協力が不可欠と主張している。 (共同通信=太田清)

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