房総南部・沖合で地震活発化 「スロースリップ」が誘発 相模トラフのプレート境界部

 房総半島の南部や沖合で6月に入り、地震活動が活発化している。相模湾から延びる「相模トラフ」のプレート(岩板)境界部で数年おきに繰り返す「スロースリップ」と呼ばれる現象が誘発しているとみられ、16日も千葉県内で震度4~2の地震が続発した。専門家は「震度5程度の地震が起きる可能性もある」として、引き続き注意するよう呼び掛けている。 

 防災科学技術研究所(茨城県つくば市)などによると、地震が起き始めたのは3日ごろ。12日と14日にはマグニチュード(M)4~5の地震が発生し、勝浦市やいすみ市などで震度3を観測した。16日も一宮町などで震度4を観測するM4・5の地震があり、その後さらにM3~4程度の地震が相次いだ。

 一連の地震の原因とされるスロースリップは、同トラフで沈み込む海側のプレートと陸側のプレートの境界部が地下で10センチほどゆっくりとずれ動く現象。地震観測網が拡充する契機となった1995年の阪神大震災以降に捉えられるようになり、近年では東日本大震災後の2011年10月や14年1月にも確認された。急激にずれ動くことで起きる通常の地震とは異なり、2~3週間ほど継続し、スロースリップの発生領域や周辺で群発地震を誘発する特徴がある。

 今回の現象は、九十九里浜の沖合や内陸側などに位置を変えながら継続。誘発地震の起きる場所や発生状況にも変化がみられるという。

 スロースリップは南海トラフなどでも捉えられているが、防災科研地震津波火山ネットワークセンターの青井真センター長は「相模トラフでは、房総沖以外で観測されたことはない」と説明。ただ、「最近は発生間隔が短くなっており、東日本大震災の影響も考えられる。今回の現象もしばらく様子を見る必要がある」とし、気象庁などと協力して観測を継続する方針だ。

 相模トラフの房総沖と周辺では1703年にM8級の元禄関東地震が起き、外房の沿岸各地が津波被害に見舞われている。

スロースリップが発生している範囲

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