世界ボクシング機構(WBO)ライトフライ級王者田中恒成(22)は、5月に同級1位の挑戦者アンヘル・アコスタを判定で破り、初防衛を果たした。「チャレンジしまくりたい」と話す田中が見据えるのは、世界ボクシング協会(WBA)同級王者田口良一との王座統一戦だ。9月13日に予定される2度目の防衛戦を前に、アコスタ戦を振り返り、今後について話を聞いた。
▽計量当日もサウナに
―5月のアコスタ戦の前は相当プレッシャーがあったのではないですか。
試合直前は相手のことを考える余裕なんてありませんでした。実は試合前夜、少し体重がオーバーしていました。計量当日も朝からサウナで汗をかいていました。
これが正しい(減量の)やり方だと分かっていればいいけど、人によって合う方法が違う。失敗したら終わりだから、なかなか難しい。そんなこと言うならさっさと階級上げろって話でしょうけど、やることやってから上げたいので。
―アコスタ戦の前から、田口選手との王座統一戦が実現するのか話題になっていましたが。
アコスタは他団体のチャンピオンより強いと思っていました。接戦は覚悟の上でした。だからこそ集中しなきゃいけなかった。だけどコメントを求められたのは、アコスタを倒した後の王座統一戦について。そこに言及するあまり、目の前の試合をおろそかにしてしまうのではと不安を抱えていました。だから試合に勝てたことは大きな自信になりました。
▽ショービジネスだから
―将来の統一戦に言及しつつ、目の前の試合に集中するのは容易ではなかったでしょう。まして、相手は16戦16勝16KO、正真正銘の強敵でした。
ボクサーは一戦一戦を大事にするから「統一戦の話は試合が終わってから」とか「集中したいから今はここのことしか考えていない」という答えが多いと思います。ただ、プロフェッショナルというかショービジネスという意味でとらえたときに、言わないのはどうなんだという気持ちがありました。だから統一戦の話をしているけど、自分自身がアコスタ戦に集中するよう努力していた。だけどそれが実際できているのか不安で、一番怖かった。統一戦の話をたくさんした上でああいう試合ができたっていうのが、気持ちをコントロールできたという自信になりました。
―そこまでして、統一戦にこだわる理由は何でしょう。
田口さんと井上尚弥さんの日本タイトルマッチ、見てすごいなと思いました。同じ土俵に立てるところまで来て、その人たちとやってみたいと思うのは当然。もちろん、正直、日本人同士の対戦は盛り上がるとも思いますし。今まで日本人同士で組まれた王座統一戦は井岡一翔対八重樫東戦の1度だけなんです。俺は2回、3回と実現させたい。口に出す以上、絶対にやり遂げたい。それに、7月に田口さんが6度目の防衛に成功したのを間近で観戦し、強いなと思いました。対戦するのが純粋に楽しみになりました。田口さんを倒して、ライトフライ級で一番になります。
▽KO勝ちが最低条件
―統一戦は実現しそうですか。
田口さんも前向きな発言をしてくれている。でも試合の交渉は自分たちの仕事じゃない。今はできることをするだけです。次の防衛戦に勝つことももちろんその一つ。
―では話を目の前の試合に移しましょう。9月13日の防衛戦への意気込みを教えてください。
相手のパランポン・CPフレッシュマートはムエタイから転向してきた選手。打たれ強いと思うけど、この先に見据える統一戦を盛り上げるような勝ち方がしたい。KO勝ちが最低条件です。(敬称略、年齢などは取材当時、共同通信写真部・稲葉拓哉29歳)
続く
過去記事はこちら
田中恒成選手の写真はこちら