「世界一優しい夫」 新幹線殺傷で遺族コメント

 県内を走行中の東海道新幹線で乗客の男女3人が殺傷された事件で、亡くなった兵庫県尼崎市、会社員梅田耕太郎さん(38)の妻と両親が18日、弁護士を通じて報道各社にコメントを公表した。要旨は次の通り。

◆妻「世界一優しい夫」

 このたび、夫の葬儀が無事に済みました。心静かに送ることができました。

 夫は、私にとって世界一優しい夫でした。二人とも旅行が好きでしたので、私が行きたいところを考えて、夫が旅行プランを作って、いろいろなところに出かけました。いつも家事を積極的に手伝ってくれ、私の仕事が忙しい時には、自分の仕事が忙しくても、ご飯を作って応援してくれました。たくさんの優しさと愛をありがとう、安らかに眠ってくださいと伝えたいです。

 夫を突然失った悲しみが癒えることはありません。このような悲しい事件が二度と起こらない社会になることを強く願います。

◆両親「細やかな気遣い」

 葬儀を終えた今となっても、息子がいなくなったということが信じられません。いつも通り「ただいま」と笑顔で帰ってきそうな、そんな気がしてしまいます。

 でも現実に立ち返ると、胸の張り裂けそうな悲しみと喪失感に、ただただ涙が流れるばかりです。何を見ても息子との思い出が浮かんできます。小さい頃からひょうきんで、みんなをいつも笑わせてくれました。中高でも大学に入ってからもたくさんの友人とともに充実した日々を送り、世界を広げていました。

 会社に勤め、結婚し、ともに働く二人の生活を本当に楽しんでいました。忙しいのに私たちにも細やかに気にかけてくれました。どの姿も無理のない自然な彼のままでした。

 穏やかに冷静に物事を判断できる性質でしたのに、このような事件に遭遇してしまったことが本当に悔しく無念でなりません。それでも目の前の危機に手を差しのべずにいられなかった息子の勇気に、我が子ながら心を激しく揺さぶられております。

 このような苦しくつらい事件が二度と繰り返されないよう、対策をとっていただけることを望んでやみません。

 事件後に多くの方々から励ましのお言葉を頂きました。皆さまが息子を悼んで下さるお気持ちに深く感謝申し上げます。

 今はただ、息子の思い出とともに静かに過ごしたいと願っております。

事件発生後、小田原駅に停車中の新幹線=9日午後11時30分ごろ、小田原市

© 株式会社神奈川新聞社