F1 Topic:レッドブルがルノーではなくホンダPUを選択した場合のメリットと課題

 カナダGPでレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「発表はチームの母国グランプリとなるオーストリアGPになる」と語った。この発表には、2019年に搭載するパワーユニットのほかに来季のドライバーラインアップが含まれるものと考えられる。 

 発表が遅れていることにルノーが苛立ちを隠していないことを考えると、大方の予想どおり、レッドブルはホンダを新しいパートナーに選ぶ可能性が高い。

 だが、今シーズンもルノーPUで勝利を挙げているレッドブルが、なぜそのルノーと現在は同等かそれよりも性能が低いとみられるホンダを選ぶのか。ホンダにスイッチするメリットとはなんなのだろうか。

 ルノーからホンダに切り替える最大の理由は、ワークス体制を築けることだ。現在ルノーはPUを供給するPUマニュファラクチャーであると同時に、ルノーとしてF1に参戦もしている。そのため、自チームがワークス体制でのPU供給を受け、レッドブルはマクラーレン同様、カスタマー待遇である。

 ワークスとカスタマーの相違はさまざまあるが、技術的に最も大きな違いはワークス体制ではPUは車体に合わせて開発されている点だ。現在のF1マシンは空力が非常に繊細であるため、PUが搭載されている車体後部の空力処理はとても重要になる。PUのレイアウトや冷却系の処理などをPUマニュファラクチャーと話し合うことができるという点で、ワークス体制はカスタマー体制よりも大きなメリットがある。

 経済的にもメリットがある。それはカスタマーチームは代金を支払ってPUを購入しているのに対して、ワークス体制は無償でPUの供給を受けることができる点だ。PUの代金はマニュファラクチャーによっても異なるが、年間25億円から35億円だと言われている。

 もし、ルノーからホンダにスイッチして、ワークス体制を得られれば、いまよりも車体側の要求に合わせたPUの提供を受けることができるだけでなく、いままでルノーに支払っていたPUの代金を別の開発費に使うことができる。それならば、ホンダのPUの性能がルノーと同等か、それよりも多少性能が低くても、レッドブルにとってはメリットのほうが大きいという判断を下すのではないかというのが、大方の予想だ。

 もちろん、これはあくまでレッドブル以外のレース関係者の予想で、最終的にレッドブルがどのような判断を下すのかは、2週間後にしかわからない。だが、カナダGPでのホーナーのコメントを聞く限り、レッドブルの内部では答えはほぼ出ており、現在は契約する相手のPUマニュファラクチャーと細部を調整しているのではないかと考えれる。

 というのも、もしも予想どおりレッドブルがホンダとパートナーを組んでワークス体制となっても、いくつかの点でこれまでのワークス体制とは異なる形態をとらなければならないという課題が残されているからだ。その課題については、次の機会に説明したい思う。

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