【産業用移動ケーブルのパイオニア・太陽ケーブルテックの現状と課題】〈谷口直純社長に聞く〉今期経常益、最高の8億円見込む 需要旺盛、内外で生産増強

 太陽ケーブルテック(本社・大阪市、社長・谷口直純氏)は1923年創立の電線メーカー。製造拠点は国内外に5工場(国内が豊岡、島根の2工場、海外が中国の蘇州と東莞、タイの3工場)を展開。谷口社長は「業界パイオニアの産業用移動ケーブル(ロボットケーブルなど)が強み。今期連結売上高は過去最高の前期を更新し160億円を、今期連結経常利益も過去最高の8億円を見込む」と話す。谷口社長に足元の課題や投資案件、業績動向など話を聞いた。(白木 毅俊)

――足元の需要動向はいかがですか。

 「当社グループは日本、中国、タイの5工場体制で、産業用移動ケーブル(ロボットケーブルなど)の生産が強み。国内外の需要は旺盛で、業績は好調だ。昨年度売り上げは対前年比で日本が15%増、中国が43%増、タイが34%増。急ピッチで需要が拡大しているため顧客の要求にフルに応じることができず、受注残が膨らんでいる」

――今期業績見通しは。

太陽ケーブルテック・谷口社長

 「2018年12月期連結業績は売上高が前期(143億4300万円)比12%増の160億円、経常利益が同(6億2900万円)比28%増の8億円を見込んでいる。売上高、経常利益ともに過去最高の前期を更新するとみている。前期の連結ベースでの銅使用量は約400トン。なお、17年12月期単独業績は売上高109億3600万円、経常利益7億3800万円だった」

 「1994年にマザー工場である豊岡を立ち上げたが、そのころから採算重視に徹底して取り組んだ。具体的には汎用ケーブルの比率を下げ、付加価値の高いロボットケーブルや産業用ケーブルに力を入れてきた。豊岡工場は各工場への技術指導を行うほか、環境問題にも積極的に取り組んでいる。島根工場は汎用ケーブルの生産拠点。物流拠点の三田テクノセンターは国内外の工場間の製品や資材の動きをリアルタイムで把握、安定供給に寄与している。従業員は連結で約1200人、単独で約300人」

――設備投資案件は。

 「今後2年間に約20億円を投じる。ロボット・産業用ケーブルの生産拠点・豊岡工場に、2億円かけてマルチ伸線機を新規に導入。電線設備もリプレースし生産効率を上げる。国内の投資は増産だけではなく合理化・省人化が狙いだ」

 「対照的に、海外は需要増に応じ増産体制を強化する。中国の人件費は急騰しており、かつてのような労働集約型ではもはや、やっていけない。自動化・省人化・効率化を徹底させる。蘇州は大型押出機を、蘇州および東莞の両工場はバンチャーとシールド機を増強する。需要が好調なタイでも押出機および撚合機の増強を計画している。蘇州は2001年に立ち上げた当社グループで最大最新の工場。東莞は1997年創立でケーブル加工品を電線から一貫生産している。2009年設立のタイは13年に現工業団地に移転、アセアン諸国に電線を供給している」

――新製品の開発は。

 「社内だけの技術開発には限界がある。京都大学、兵庫県立大学、大阪工業大学などと産学連携の形でも進めている。電線は成熟製品であり、画期的なものはそうそうないが、植物由来の軽量で屈曲性の良い新素材や熱可塑性炭素繊維複合材料を試している。ロングセラーのEXT―2、多関節用ロボットケーブルEXT―3Dなどに続く価値ある製品を造っていきたい」

――5年後が節目の「設立100周年」ですが。

 「節目となる2023年度には連結ベースで売上高200億円、経常利益10億円を目指している。今後もグループ全社でコンプライアンスの遵守、ガバナンス強化に取り組むのはもちろん、同業他社との協業なども検討していく。中国市場は日本の約10倍の規模であり、まだまだ開拓の余地がある。愉快な話ではないのだが、中国のネット市場では当社をかたる偽物サイトが多数あり、問い合わせ先を誘導する巧妙さに驚く。何らかの対処をする方針だが、これは中国市場で当社が認められた証ともいえる。太陽ケーブルテックは単なる日本メーカーではなく、しっかりと中国市場に根付き、『日系の中国企業』という存在になれればと思う。そして、『ロボットケーブルは太陽』といわれるよう、いっそう業容に磨きをかけていきたい」

© 株式会社鉄鋼新聞社