そこに立っているだけで目が離せなくなる、笑ってくれるだけで胸がぎゅっと締め付けられる。のんは、そういうスターの素質を持った一人だと思う。大人の事情に翻弄されて、自分の名前も名乗れなくなってしまったのに、いやだからこそかもしれない、本作で目にした彼女は以前よりもさらに、輝きを増しているように見えた。
2017年12月、東京・恵比寿ガーデンホールにて開催された、自身初となる主催ライブイベントのなかから、彼女がボーカルとギターを務めるバンド“のんシガレッツ”のライブの様子を収録した本作。収録曲は7曲と決して多くはないが、1曲1曲が彼女の今を率直に歌っているように感じてしまうのは私だけではないはずだ。「決め付けた虚像なんかより 見せない本当がドラマチック」(『あることないこと』)「大人のルールってなんだよ変だ」(『へーんなのっ』)と、彼女がギターをかきならし、無邪気に叫ぶぶんだけ、切なくなったりした。
それでも、彼女を支えてくれるのもまた、かっこいい大人たちだったようで。本作で歌われた作曲や編曲にも飯尾芳史のほか大友良英、高野寛とビッグネームが並び、ここでも彼女のスター性を実証している。見終わった頃には私もすっかり彼女を見守りたいと願う大人の一人になり、Instagramをフォローしてしまった。
(Mastard Records・5000円+税)=玉木美企子