子どもに迷惑?

 配偶者が突然、小学1年生と生後5カ月の2人の子どもを置いて姿を消した。これからどう生活すればいいのか。残された側の親は大きな不安に駆られるはず▲そんな境遇から立ち上がり、保育園を設立した頼もしい男性がいるという。長崎市の松尾伸也さんだ。「父の日」の本紙で記事を読み、自分と同じシングルファーザーを支援したいという志に感銘を受けた人も多いだろう▲松尾さんは育児の相談に行った児童相談所で「養護施設に入れることはできます」と言われ、意地でもわが子を自分で育てようと決意したという。大変な道だっただろう▲一方、そんな父親の思いに水を掛けるような政治家の発言が先日あった。乳幼児の養育に関し「言葉の上で『男も育児だ』とか格好いいことを言っても、子どもにとっては迷惑な話だ。子どもがお母さんと一緒にいられるような環境が必要だ」と自民党の萩生田光一幹事長代行▲母親による育児の意義を過度に強調する発言は、母親に責任を押しつけ、父親を子どもから遠ざける恐れはないか。そして、生活不安を抱えるひとり親を戸惑わせ追い詰めやしないか▲松尾さんの志が「子どもに迷惑」なはずはないだろう。むしろ、子育てに性別の壁はないことを示してくれたのだと思う。あす23日からは男女共同参画週間。(泉)

© 株式会社長崎新聞社