心に届け横浜大空襲の体験 五大路子さんが読み芝居披露

 73年前に実際にあった大空襲を、子どもたちに聞いてもらいたい-。横浜を舞台としたオリジナル芝居を発信し続けている「横浜夢座」の座長でハマっ子俳優五大路子さんが22日、短編小説「真昼の夕焼け」(筧槙二著)の読み芝居を横浜市磯子区内の小学生に披露した。子どもたちは45分間にわたる朗読劇を静かに聞き入りながら凄惨(せいさん)な空襲を想像し、平和の尊さを感じていた。

 磯子区民文化センター杉田劇場の主催事業の一環で2016年度からスタート。3回目の今年は五大さんのほか、松井工さん、大和田悠太さん、高井清史さん、伊藤はるかさんらが出演。さわの里小、屏風浦小、洋光台第四小の約200人が鑑賞した。

 主人公で15歳の中学生「健二」は1945年5月29日朝、突然の大空襲で逃げ惑う中、一人の女学生を救う。赤ちゃんを連れた女性や子どもなど大勢の人たちが目の前で次々と殺されたが、2人はかろうじて生き延びる。少女がたった一人自宅へと向かった先には、燃える街が黒い煙に覆われる空を照らし、夕焼けのように見えていた-。筧さんの体験を基にしたものだ。

 終演後、子どもたちが一斉に手を挙げて感想を寄せた。屏風浦小6年の女児は「私の地元にこんな話があることを知ってびっくりした。自分がその時代に生きていたら、怖くなって逃げ切れないと思った」と言葉を詰まらせた。さわの里小6年の男児は「戦争で人の命が奪われる怖さと感情が伝わってきた。日本では戦争をしていないけど、他の国では戦争をしている。なぜ、戦争を終わらせることができないのか」と憤った。

 同小6年の女児が「この体験は後の世代まで語り継いでいかなければいけないと思った」と話すと、大きな拍手が上がった。

 五大さんは「皆さんには想像する力がある。心と頭でいろんなものが見えたと思う。きょう聞いた話を時々思い出して、自分らしく自分なりの思いや考えを持って生きてほしい」と語り掛けた。

子どもたちが次々と感想を述べる姿に驚く五大さん(左)ら出演者 =杉田劇場

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